インタビューレポート
先端技術のベンチャー育成を支援する新しい法人を作る法案ディープテックはミドル〜レイター資金と海外含むプロ経営がカギ。政府から独立した投資判断で、兆円級のホームラン1社を狙うKPIが大事だと思う
期待
業務に関係・金融関係者
2026年5月3日 00:59
インタビューの分量1219文字👫インタビューを受けた人
投資・金融の実務に携わる立場から、ディープテック投資の資金供給構造やファンド設計、投資判断ガバナンス、KPI設計の観点で本法案を評価している。
💬主な意見
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本日は「先端技術研究成果活用推進機構を新設する法案」について、率直なお考えを伺えればと思います。まず、この法案にどういう立場で関わっていますか?
投資・金融関係者
ありがとうございます。今回の法案改正(グローバル・スタートアップ・キャンパス運営法人の設立)について、現時点でどの程度ご存知ですか?
概要は知っている
承知しました。 今回の法案について、全体としてどのように評価していますか?
どちらかといえば良い
前向きに見ていらっしゃるのですね。 「どちらかといえば良い」と感じるにあたって、特に評価している点はどのあたりですか?
これまで投資が限定的だったディープテック分野の投資の担い手が増えるのは良い事だと思う
おっしゃる通り、ディープテックは資金の出し手が限られがちなので、担い手が増えることへの期待があるのですね。 「投資の担い手が増える」という点で、今回の機構がどんな役割を果たすと特に効いてくると見ていますか?
シード、アーリーなフェーズは日本のベンチャーキャピタルのファンド規模でも支援できるので、ミドル・レイターフェーズの資金的な支援が増えると良いと思う。また、これまで大学発のスタートアップはアカデミア出身のメンバーが経営する事例が多かったが大学との兼務でリソースが十分に割かれていない課題があります。プロ経営人材を海外からも含めて呼び込む必要があると思う
資金面ではミドル〜レイターを厚くしてほしいことと、プロ経営人材(海外含む)の呼び込みが鍵、という見立てなのですね。 ミドル・レイターフェーズの資金支援について、機構の「出資・貸付け」がどういう条件や設計だと、民間VCの投資を後押ししやすいと感じますか?
出資に関してはリード投資ができる体制だと良いと思う。他の官民ファンドの事例ではリード投資をしなかったり、民間投資を同額要求する事が多い。あとはファンド期限も10年より少し長い設計が良いと思います。ディープテック分野は実用化まで時間がかかるので。 日本の民間VCをミドルフェーズ以降で呼び込むのは限界があると思います。大手のVCでもファンド規模が300-500億円ぐらいですが、彼らの初回投資のバリエーションは2桁億円規模が一般的です。ミドル以降のフェーズで初めて参画する独立系VCは極めて少なく、JICなどの政府系ファンドや日系大企業の投資でミドル以降の投資を賄う構造になっているのが現実です
リード投資ができる体制、共同投資の「同額要求」に縛られないこと、そしてディープテックの時間軸に合わせてファンド期限を長めに—という条件が大事だということですね。民間VCの規模感からすると、ミドル以降の資金供給は官民ファンドや事業会社が中心にならざるを得ない、という現状認識もよく分かりました。 その上で伺いたいのですが、機構が“リード投資をする”場合に、投資判断のガバナンスはどの程度の独立性が必要だと感じますか?
政府の意向とは切り離して意思決定する事が大前提です。投資の意思決定をする人物にプロ投資家を呼び込む事、その人物に多額の出資コミットを求める事が大事です。意思決定者が成功に対して責任を持てる構造にする事が大事です
投資判断は政府の意向から切り離し、プロ投資家が責任を持てる設計が前提、ということですね。 「意思決定者に多額の出資コミットを求める」という点について、どのくらいのコミット感(割合や金額イメージ)があると“責任を持てる構造”になると感じますか?
それはファンドの規模次第ですが、海外の大型VCのGPコミットの金額や比率を参考にすると良いです
なるほど、ファンド規模に応じてですが、海外の大型VCのGPコミット水準をベンチマークにするのが良い、ということですね。 今回の法案で、あなたが特に気になっている点はどれですか?
支援する対象技術分野の選び方
ありがとうございます。技術分野の「選び方」が気になっているのですね。 この法案の文脈で、対象技術分野の選定がどんなやり方だと納得感が高いと思いますか?
マーケットトレンドに合わせてアジャイルに対象分野を変更していく仕組みが重要です 海外で先行して投資されている分野を探索するインテリジェンス機関が組織内に設けられるべきだと思います
マーケットトレンドに合わせて機動的に見直せることと、海外の投資動向を継続的に探索するインテリジェンス機能が必要、ということですね。 その「アジャイルに対象分野を変更する」仕組みについて、見直しの周期はどれくらいの頻度が現実的だと思いますか?
四半期に一回はレビューした方が良いと思います
四半期ごとにレビュー、という運用感覚なんですね。市場の変化を捉えるには確かにそのくらいのテンポが必要そうです。 最後に伺います。この法案について、制度を設計する人に伝えるとしたら、どんなことを伝えたいですか?
上記で述べた事以外の論点だと、失敗をあらかじめ織り込んだKPI設計にすべきです。どうしてもディープテック分野の投資は、数十件投資したら失敗案件が先行して、失敗という結論に行き着きます。テスラやスペースXのようなホームラン案件を1件でも作れれば産業創造としては勝ちという意識でポートフォリオを組むというマインドセットが必要です。
KPIを「失敗が先に見える」前提で設計し、ホームラン1件を狙うポートフォリオマインドが重要、ということですね。 そのKPI設計について、たとえば四半期や年度の評価で「これは失敗と見なさない」と線引きしたい指標は、どういったものになりますか?
個別の失敗案件は意識しなくても良いと思います。投資ポートフォリオの中で兆円の時価総額を目指せる企業があるかが大事だと思います
ありがとうございます。個別案件の成否に一喜一憂せず、「兆円規模の時価総額を狙える企業がポートフォリオの中に育っているか」を重視したい、ということですね。 ここまでで一通り主要な論点は伺えましたので、これまでのお話をまとめてレポート形式に整理してもよろしいでしょうか?
本日はお時間をいただき、ありがとうございました。伺った内容をレポート案としてまとめました。内容に不足やニュアンス違いがないか、ご確認ください。
海外の投資動向を調査するインテリジェンス部門の設置は追加して。 また、テスラやスペースXのようなホームラン案件を1件でも作れれば産業創造としては勝ちというメッセージも入れたいです
ありがとうございます。ご指摘の2点(①海外の投資動向を調査するインテリジェンス部門の設置、②テスラ/スペースX級のホームラン1件で産業創造としては勝ち、というメッセージ)をレポート案に反映しました。以下の内容でニュアンス相違がないかご確認ください。
テスラ/スペースX級のホームラン1件で産業創造としては勝ちというメッセージが抜け落ちています。個別の会社名が盛り込みにくいなら兆円級の会社と置き換えて良いので盛り込んでください
本日はお時間をいただき、ありがとうございました。ご指摘どおり「ホームラン1件(兆円級企業)で産業創造としては勝ち」というメッセージを明確に追記して、レポート案を更新しました。内容のニュアンス違いがないかご確認ください。