インタビューレポート
ロケットの打上げルールを見直して、日本の宇宙産業を強化するための法案衛星なしの試験打上げができるとロケット開発が進み、有人にも大事だと思う。一方で審査が形式的だと負担増なので、商用と研究で基準を分けてほしい。
期待&懸念
専門的な有識者・衛星研究者
2026年4月13日 22:45
インタビューの分量732文字👫インタビューを受けた人
教育・研究目的の人工衛星開発に携わる研究者として、ロケット試験打上げの制度や安全審査の運用が研究開発の進め方に与える影響を見ている。
💬主な意見
🎤すべての会話ログ
本日は「ロケットの打上げルールを見直して、日本の宇宙産業を強化するための法律(人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律案)」について、率直なお考えを伺えればと思います。まず、この法案にどういう立場で関わっていますか。(1つ選択)
有識者・研究者として宇宙分野に関わっている
ありがとうございます。有識者・研究者として関わっていらっしゃるのですね。 具体的に、どんな研究テーマや活動の文脈で、この法案(ロケット打上げの許可対象拡大や政府補償の拡大等)と接点がありますか?
教育や研究のための衛星の開発などを行います
教育・研究目的の衛星開発に携わっていらっしゃるのですね。現場の視点が伺えそうでありがたいです。 今回の法改正(衛星の打上げ・管理に関する制度)について、現時点でどの程度ご存知ですか。(1つ選択)
断片的に聞いたことがある程度
承知しました。では前提をそろえるために、要点だけ短く共有しますね。この改正は、①人工衛星を載せないロケットの試験打上げも許可の枠に入れる、②そうした打上げでも事故時の政府補償の対象を広げる、③宇宙葬カプセルなど“人工衛星に当たらない物体”のルールも整理して宇宙ごみ対策につなげる、という方向性です。 そのうえで伺います。今回の法改正について、全体としてどのように評価していますか。
評価している
評価しているとのこと、ありがとうございます。 その評価に至った背景として、どのあたりに良さ(期待できる効果)を感じていますか?
衛星を載せないロケットを打ち上げられるようになると、ロケットとしても試験しやすくなるために良いなと考えています。これは、今後人が乗るロケットを開発していく上でも非常に重要と考えています。
試験打上げがしやすくなることでロケット開発全体の前進につながる、という期待をお持ちなのですね。有人を見据えると、段階的に飛ばしてデータを積む重要性が特に大きいという感覚も伝わってきました。 その「試験しやすくなる」という点について、これまでの制度だと試験の設計や実施でどんなところがやりにくかったですか?
何かしらの衛星を載せないといけなかった、という理解の下では、衛星のリスクがあまりにも大きいのかなと思います(結果として打ち上げ費用は安くなるのですが、ロケットの打ち上げが失敗した場合には衛星でデータが取れません。これは双方にとって痛手かなと思っています
なるほど、ロケットの試験のために衛星を“載せる前提”になると、失敗時に衛星側の成果(データ取得)も同時に失われてしまい、ロケット側・衛星側の双方にとってリスクが大きい、ということですね。現場感のあるご指摘です。 一点だけ補足すると、現行法は「人工衛星を載せる打上げ」を主に想定して枠組みが作られていて、衛星を載せない純粋な試験打上げは制度上扱いが明確ではありません。今回の改正は、まさにその“空打上げ・試験打上げ”も許可の対象として整理する趣旨です。 そのうえで伺いたいのですが、もし「衛星を載せない試験打上げ」が制度として明確に許可されるようになった場合、研究・教育の衛星開発側では、開発計画(スケジュールや設計の進め方)にどんな変化が出そうですか?
打ち上げた方が早く多くわかることがあるフェーズでは、ひとまず打ち上げよう、ができるようになるため、開発スピードを上げやすいと思います(いまはたくさんの試験やシミュレーションによって、それらの情報を得ているという認識です
「まず打ち上げて早く学ぶ」ができるようになって、試験・シミュレーションに寄せていた学習をフライトで前倒しできる、ということですね。開発速度に効きそうです。 今の法規制の課題・法改正で気になっていることはなんですか?(1つ選択)
許可や認定を取得するための手続き
ありがとうございます。許可・認定の手続きが気になっているのですね。 その点が気になるのは、どんな場面やプロセスでの負担が大きくなりそうだと感じているからですか?
そもそも審査する側が技術を理解していないと、形式的な作業となり、負荷が増すだけなのを心配しています。審査する人が宇宙分野の技術に造詣が深いなら問題ありません
懸念のポイント、よく分かりました。審査側の技術理解が十分でないと、実質的な安全性向上につながらない一方で、申請側の作業だけが増えてしまう、という心配なのですね。 その「技術を理解していないまま形式的になってしまう」リスクは、具体的には審査のどの部分(例:安全解析の妥当性確認、リスク評価の前提、試験データの扱い等)で起きやすいと感じますか?
安全審査の妥当性についてです。大型衛星と同じ審査を小型衛星でやるのは意味がない中で、そういうことを理解してそれぞれに対して妥当な判断を下さる人が審査員になるかが気になります
安全審査が「規模やリスクに見合った形」にならず、大型向けの枠組みを小型にも当てはめてしまうと、実質的な意味が薄いのに負担だけ増える、というご懸念ですね。まさに制度設計・運用で効いてくる点だと思います。 この法案について、制度設計をする人に伝えるとしたら、どんな点を重視して運用設計してほしいですか?
商用向けと、研究/学術向けは基準を分けられると良いですね(研究や学術向けは何かしらのpodsに入って打ち上げるのを前提にリスクを許容できるようにする、とか
商用向けと研究・学術向けで基準を分けて、研究側は一定の前提(PODs搭載など)を置いたうえでリスク許容できる設計に、というご提案ですね。現場の実態に合わせた“リスクベース”な運用を求めているのだと理解しました。 ここで一点だけ伺いたいのですが、その「研究/学術向けの基準」を作るとしたら、審査や要件を分ける軸はどんな指標が現実的だと思いますか?(例:質量、軌道高度、失敗時の被害範囲、再突入の有無、PODs等の標準化の有無…など)
軌道高度が低い場合には試験をさせてもあまり意味がないですし、そもそもダブりになりようがありません。にも関わらず、いまは同じ基準で試験しており違和感です。
軌道高度を軸にするのが現実的、というお話ですね。低軌道側だと軌道上での干渉・長期滞留のリスクが相対的に小さく、同じ基準で一律に求められるのは違和感がある、という問題意識だと受け取りました。 その前提で伺います。高度に応じて要件を変えるとすると、どのくらいの高度帯あたりで基準を切り替える(あるいは段階化する)のが妥当だと感じますか?
300-350km
ありがとうございます。300〜350kmあたりを目安に基準を切り替えるイメージなのですね。 ここまで伺った内容をこちらで整理してレポートにまとめていってよいですか?
お時間をいただき、ありがとうございました。伺った内容をもとにレポート案を整理しました。内容に抜け漏れやニュアンス違いがないか、ご確認ください。