インタビューレポート
個人情報の使い方にルールを追加し、悪質な違反には課徴金を科せるようにする法案AIや統計に個人情報を使いやすくして工数を減らしつつ、闇転売みたいな不正は止めたい。ただ子どもの同意まわりは、学校で機微情報が絡むと運用がこじれて現場が不幸になりそうで心配。
期待&懸念
業務に関係・企業担当者
2026年4月24日 18:11
インタビューの分量1229文字👫インタビューを受けた人
仕事で個人情報を扱う立場として、AI・統計利用の円滑化(同意取得の工数削減)と、不正に取得した個人情報の闇転売への歯止めの両立に関心がある。あわせて、子ども(16歳未満)の個人情報に法定代理人の関与を義務づける運用が教育現場でどう機能するかを懸念している。
💬主な意見
🎤すべての会話ログ
本日はお時間ありがとうございます。「個人情報の使い方にルールを追加し、悪質な違反には課徴金を科せるようにする法案」について、率直なお考えを伺えればと思います。 まず、この法案にどういう立場で関わっていますか。
仕事で個人情報を扱っている(企業の担当者、行政職員など)
ありがとうございます。お仕事で個人情報を扱っていらっしゃるのですね。 今回の個人情報保護法の改正について、現時点でどの程度ご存知ですか。
概要は知っている
承知しました。概要は把握されているのですね。 今回の法改正について、全体としてどのように評価していますか。
どちらかといえば良い
ありがとうございます。「どちらかといえば良い」と感じていらっしゃるのですね。 そう評価されるにあたって、特にプラスだと感じた点はどのあたりですか。
統計やAI利用の際の個人情報活用について、法益の観点から妥当な裁定を下している点
なるほど、統計・AI目的の利活用について、プライバシー等の法益とのバランスをとった判断だと受け止めていらっしゃるのですね。 その「妥当な裁定」だと感じた前提として、どんな条件や歯止めが満たされている状態を想定されていますか。
個人情報の対象者にいちいち毎回確認を取らずにAI活用ができる。それにより業務工数が削減できる。一方で一時期社会問題となっていた不正に得た個人情報の闇転売について歯止めをかけている状態
お話を伺うと、現場の実感として「同意取得の負担を減らしてAI活用が進む」点に期待がありつつ、「闇名簿の転売のような不正流通には歯止めが必要」というバランスを重視されているのですね。 では確認させてください。今回の改正の中で、あなたが特に気になっている点はどれですか。
子ども(16歳未満)の個人情報の取り扱い・法定代理人の関与義務化
ありがとうございます。子ども(16歳未満)の個人情報について、法定代理人の関与が義務になる点が特に気になっているのですね。 その点が気になる背景として、どんな場面を想定されていますか。
例えば義務教育の現場(保護者様が同意を得ない場合、教育現場ではどうするのか、国民の義務の1つである義務教育を受けさせる義務に反するのか)、メディア報道の現場(映像に子供が映っており、許可が確認できないものは全部モザイク処理をするのか?)、個人の表現に関する全般(単なる写真も規制対象なのか、表現の自由と衡量可能か)
具体的な場面感まで挙げてくださりありがとうございます。現場(教育・報道・表現)で「同意が取れないと何が止まるのか」が心配なのですね。 一点だけ、確認させてください。いま挙げていただいた場面の中で、この法案の影響として特に現実的に起こりそうだと感じているのはどれですか。
義務教育の現場は特に現実的な変化が起こると考えています。義務教育を受けさせる義務が、実質的に公教育の現場で子どもの個人情報を国家に開示する義務と受け取られかねません。
なるほど、義務教育の現場では「教育を受けさせる義務」が、結果として“学校(公教育)に子どもの個人情報を渡さざるを得ない”という強制に近い受け止めになりうる、という懸念なのですね。 その懸念が具体的に強く出るのは、学校で扱う情報のうちどの種類の個人情報だと感じていますか。
成績、思想信条、病歴、補導歴などの機微情報。 元々法整備が曖昧だからこそ問題が表面化していませんでしたが、「同意しない選択肢がある」「いつでも同意を取り下げられる」となると、Noが発生した後のオペレーションをどうしていくかが懸念です。
挙げていただいた成績・思想信条・病歴・補導歴といった機微情報は、確かに学校現場だと日常的に発生し得るうえに、扱いを誤ると影響も大きいですよね。「同意しない」「途中で取り下げる」が現実に起きた後の運用が詰まっていない、というご懸念もよく分かります。 では最後に、この法案について制度を設計する人に伝えるとしたら、どんな要望を出したいですか。
子どもの権利、個人の権利を守ることは非常に重要だが、具体のオペレーションに落とし込んだ場合に却って不便や不幸が発生しないように細心の注意をもって法整備してもらいたい。 この問題は女性労働者の権利保護が目的のはずだったAV新法問題と同じ構造を生みかねない。
ご意見ありがとうございます。権利保護の理念には賛同しつつ、現場のオペレーションに落としたときに逆に不便や不幸を生まないよう、制度設計を詰めてほしいということですね。AV新法のように「守るための制度」が現場で別の歪みを生む構造への警戒感も理解しました。 ここまでのお話をまとめてレポートに整理しますが、その前に1点だけ確認させてください。あなたが懸念される「不便や不幸」が現場で起きるとしたら、どんな形で表れそうですか。
教育の現場では、保護者様、生徒、教育者の伝言ゲームが常に発生しており、認識の小さな齟齬でトラブル、ヒヤリハットは多数発生しています。しかし、その多くは誰の悪意もないもので、教育者側の説明責任を果たすことで円満に解消します。 しかし、個人情報保護に関する本制度を保護者側の強力な交渉カードとして使われると、却って小さなハレーションが大きなものとなり、ボタンがかけ違ったみ全員が不幸になるリスクがあります。
現場の実態として、ふだんから小さな認識違いは起きるけれど、多くは悪意がなく説明で収まっている一方で、個人情報保護の制度が「強い交渉カード」になった瞬間に、軽微な行き違いが一気に大きな対立に発展し、結果として保護者・生徒・教職員の全員にしわ寄せが来る――というイメージなのですね。 その「交渉カードとして使われる」状況が起きやすいのは、学校側が求める同意や情報提供のうち、どんな種類のものだと感じますか。
生徒と教師の普段の会話や面談(盗み聞きではないが、他の生徒が聞こえてしまった、いつの間にか噂になっていたが、それは教師の会話によるものなのか、他生徒やその生徒自身の吹聴なのか分からない等)
ありがとうございます。面談や日常会話のような、記録としても境界としても曖昧になりやすい場面で、情報が意図せず広がってしまい「誰が原因か特定できない」まま対立が大きくなる、という懸念なのですね。 その場面で、保護者側から学校に対して「個人情報の取り扱い」として問題提起されやすいのは、どういうケースだと思いますか。
生徒の機微情報が出た時全般です。特にいじめ、補導歴など生徒の進路にも関わる部分。
承知しました。いじめや補導歴など、進路にも直結し得る機微情報が絡むと、問題提起が起きやすく、かつ対立が深刻化しやすいということですね。 ここまで伺った内容を踏まえると、制度設計上の焦点は「学校現場で不可避に発生する口頭・面談・共有のプロセスを、どこまで“個人情報の取扱い”として明確化し、紛争化を防ぐ運用にできるか」だと理解しました。 このあたりをレポートとして整理するために、最後に1点だけ教えてください。学校側が“最低限ここまでは共有しないと現実に回らない”と感じる、いじめ・補導歴に関する情報共有の範囲はどのあたりだと思いますか。
まず職員は原則として、機微情報を予め知る必要があります。職員は当然機微情報の扱い方について最大限配慮しますが、それとは別の出処で情報が錯綜した時に責任範囲が明確にならないまま保護者様が被害者、学校側が加害者という2項対立になりかねません。 こども個人情報保護の厳格化は一見メリットしかないように見えますが、実態が親権の強化、教師と保護者の不要なパワーバランスの変化という副作用を生みかねないと考えます。
ありがとうございます。学校運営の観点では、職員が事前に機微情報を共有しておく必要性がある一方で、情報の出所が複線化して責任の切り分けが難しいと、保護者—学校の二項対立に発展しやすい、ということですね。さらに、子どもの保護強化が“親権の強化”や保護者と教師のパワーバランス変化という副作用を生み得る、というご懸念も重要な示唆だと思います。 ここまでの内容をまとめ、レポートを作成します。
本日は詳しくお話しいただき、ありがとうございました。以下、伺った内容の要約レポート案です。ご認識とずれていないかご確認ください。