インタビューレポート
ロケットの打上げルールを見直して、日本の宇宙産業を強化するための法案ロケット単体も許可・政府補償の対象が広がって説明しやすくなるのは助かる一方、再突入は補償も制度も弱く資金調達の壁が心配。早めに再突入許可の議論を進めてほしい。
期待&懸念
業務に関係・宇宙BD担当
2026年4月20日 21:47
インタビューの分量4033文字👫インタビューを受けた人
人工衛星を開発する宇宙スタートアップで事業開発を担当。宇宙活動法の条文・運用も把握し、資金調達や事業計画の観点から制度影響を見ている。
💬主な意見
🎤すべての会話ログ
本日はお時間ありがとうございます。宇宙活動法を施行以来初めて改正し、ロケット単体打上げの許可制度創設と政府補償の対象を拡大する法案について、率直なお考えを伺いたいです。 この法案にどういう立場で関わっていますか。(1つ選択)
打ち上げ・衛星運営など、宇宙活動法の対象となる事業に携わっている
ありがとうございます。宇宙活動法の対象事業に携わっていらっしゃるのですね。 具体的に、打上げ・衛星運営の中ではどんな業務や役割で関わっていますか?
人工衛星を開発する宇宙スタートアップにおいて事業開発を担当しています。
ありがとうございます。宇宙スタートアップで事業開発を担当されているのですね。 今回の法改正(衛星の打上げ・管理に関する制度)について、現時点でどの程度ご存知ですか。(1つ選択)
内容まで把握している(条文・運用も含めて)
条文・運用も含めて把握されているのですね、心強いです。 今回の法改正について、全体としてどのように評価していますか。
一部評価している
一部評価、ということですね。どの点を評価していると感じますか?
1.搭載物の無いロケット単体での打上げや、ダミーペイロード等の分離されない人工物体のみを搭載した打上げについて、打上げ許可の対象とした点 2.従来の宇宙活動法の人工衛星の定義に該当しない、地球を回る軌道等で使用しない人工物体についても、人工衛星管理許可の対象に含めた点 3.内閣府の「宇宙活動法の見直しの基本的方向性 最終とりまとめ」において、有人宇宙ロケットやロケット再使用段等についても、今回の法改正の対象にはしなかったものの、「施行規則や審査基準の改正等により実現を図るべき事項」として明記された点
評価されている点がとても具体的で、実務感覚に近い整理だと感じました。 いま挙げていただいた中で、①の「ロケット単体/ダミーペイロード等も許可対象に入ったこと」について、現場の事業開発の観点では、どんな部分が一番やりやすくなる(あるいは意思決定が進みやすくなる)と思いますか?
従来はロケット単体の打上げだけであれば打上げ許可の対象とならず、第三者損害賠償担保措置における政府補償が適用されない可能性がありました。今回の改正で、そういったケースでも政府補償の対象となり、民間事業促進につながるほか、宇宙条約の履行という観点でも良い対応です。
政府補償の適用可能性が明確になって、リスクの見立てや資金調達の説明がしやすくなる、という実感が伝わってきました。 その「政府補償が適用されない可能性がある」ことが、これまで具体的にどんな場面で事業の足かせになっていましたか?
当然、民間事業者として打上げ保険を民間の保険マーケットから調達しますが、限度はあり、一定額以上において政府補償が得られないとなると、民間の事業活動を阻害する要因になります。
民間保険の上限が見えている中で、一定額以上を政府補償でカバーできる見通しが立たないと、事業として成立させにくいということですね。 その状況だと、具体的には「どの局面」で一番影響が大きいですか?(例:顧客との契約条件の交渉、投資家への説明、社内のGo/No-Go判断 など)
例示されたいずれのケースでも影響は生じ得ると考えています。
確かに、その3つはどれも直撃し得ますよね。 その中でも、直近のご経験や見立てとして「特に揉めやすい/詰まりやすい」と感じる局面はどれですか?
投資家への説明
投資家への説明が一番詰まりやすい、ということですね。とても重要な示唆だと思います。 投資家側からは、政府補償がロケット単体打上げ等にも及ぶかどうかについて、具体的にどんな点を確認されたり、懸念として指摘されたりしましたか?
試験機においては必ずしもペイロードを搭載するわけではなく単体での打上げとなる可能性があります。その場合に、ロケットとしてはほぼ同じコンフィギュレーションであるにも関わらず、打上げ許可の対象外となることのリスクを指摘されることが想定されます。
なるほど、機体のコンフィギュレーションは実質同じでも「ペイロードを分離するかどうか」で許可・補償の枠から外れ得る、という制度上のギャップが投資家の懸念点になりやすいのですね。 その懸念が出たとき(あるいは出ると想定されるとき)、投資家は最終的にどんな種類の“追加の材料”を求めてくることが多いですか?
人工衛星の搭載、民間保険金額の増額などが考えられます。
ありがとうございます。制度のギャップを埋めるために「人工衛星を載せる」「民間保険額を上げる」といった“本来やらなくていい対策”が求められ得る、ということですね。 その「人工衛星を搭載する」という対策を取る場合、事業や開発計画にどんな影響が出そうですか?
小さな人工衛星であっても載せてしまえば打上げ許可の対象になるのですが、本来の技術開発の趣旨から外れた対応だと考えます。
おっしゃる通りで、制度のために“載せなくていい衛星を載せる”のは、試験の目的や設計最適化からすると歪みが出やすいですよね。 今回の改正でロケット単体等も許可対象になったことで、そうした「本来の趣旨から外れた対応」はどの程度減りそうだと感じますか?
もともと試験機でもペイロードを載せる例は少なくないため、その観点で定量的にどう影響するかは不明です。
なるほど、試験機でもペイロード搭載自体は珍しくないので、改正の効果を定量では見積もりにくい、ということですね。 一方で、今回の改正によって「少なくとも制度上の説明が楽になる」と感じる部分はありますか?
定性的には政府補償の対象範囲が広がることは、ステークホルダーへの説明において好材料になります。
ありがとうございます。「定性的には好材料」という感覚、とても実務的だと思いました。 では次に、今の法規制の課題・法改正で気になっていることはなんですか?(1つ選択)
今回の許可対象から外れたもの(再使用型ロケットの着陸、ロックーン、サブオービタル等)
ありがとうございます。再使用型ロケットの着陸やロックーン、サブオービタル等が今回の許可対象から外れた点が気になっているのですね。 その点が気になるのは、どのような背景やきっかけからですか?
今回の法改正においては、再突入許可制度が対象外(早急に法改正を行うべきであるものの更なる論点整理が必要な事項)とされてしまいました。これは大変憂慮すべき状況です。本改正の最大のポイントと言っても差し支えありません。
再突入許可制度が対象外になったことを、かなり強い問題意識で捉えていらっしゃるのですね。 その「憂慮すべき状況」が実務に落ちてくると、具体的にはどんなリスクとして現れると見ていますか?
先ほどロケットの打上げ時の第三者損害賠償担保措置における政府補償の話を申し上げましたが、宇宙機の再突入時の第三者損害賠償担保措置においては、驚くべきことに政府補償が付かないのです。政府が補償しない行為に対して、民間のみがリスクを取って事業を進めなさいというのは、イノベーションの阻害を引き起こすことにつながります。
再突入時は政府補償が付かず、民間だけが大きなリスクを背負う構造になっていて、それがイノベーション阻害につながるというご懸念ですね。かなり切実だと感じました。 その「再突入時に政府補償が付かない」点は、事業としては具体的にどんな意思決定(例:開発計画、実証の時期、資金調達)を一番難しくしていると見ていますか?
資金調達や事業計画において大きな悪影響があります。もちろん再突入時の第三者損害賠償に対しても民間の保険マーケットは一定存在しますが、ロケット打上げと比較するとかなり小さなマーケットです。保険を引き受ける再保険者もグローバルで大手2社程度とかなり限られております。それに加えて日本においては政府補償もつかないとなると、宇宙機の再突入に対してリスクを懸念する投資家が出てくることが想定されます。そうなると事業計画の修正や縮小が求められるなど、民間事業として由々しき事態です。
再突入は保険マーケット自体が薄い上に、日本では政府補償も付かないとなると、投資家のリスク認識が一段厳しくなって事業計画の修正・縮小にまで波及し得る、ということですね。 最後に、この法案について制度設計をする人に何か一つ伝えることがあるとしたらそれは何ですか?
宇宙政策委員会「宇宙活動法の見直しの基本的方向性 最終とりまとめ」において「遅くとも改正後の宇宙活動法の施行後3年以内には具体的な見直しの検討を行うことが適切と考えられる。」と書かれておりますが、今回の法改正後可及的速やかに「再突入許可制度」の導入に向けた協議を開始していただきたいです。大気圏再突入技術は日本の宇宙開発におけるキーテクノロジーとなり得る大きなポテンシャルを秘めており、日本の民間事業者が再突入を行いやすくするよう、速やかに法制度としての整備を強く要望します。
大事なポイントを明確にお伝えいただきありがとうございます。再突入は日本のキーテクノロジーになり得る一方で、現状だとリスク(と保険市場の薄さ)が資金調達や事業計画に直結してしまう、というお話でしたね。 確認ですが、制度設計として「再突入許可制度」を導入するとしたら、最低限どんな要素(例:許可審査の観点、第三者賠償の枠組み、政府補償の付け方等)が入っていることが重要だと思いますか?
許可審査の観点:多くのケースで人工衛星管理許可と同時に許可を取得することになるはずなので、できるだけ重複の無い申請となることを希望します。 第三者賠償の枠組み・政府補償の付け方:ロケット打上げ許可の場合と同様、民間の保険加入を必須とする二階建て方式が望ましいです。民間保険の保険金額は一律ではなく、再突入機の仕様等に合わせた柔軟な対応を希望します。例えば米国のCrew Dragonと日本のはやぶさでは、同じ再突入といってもカプセルの大きさが全く異なるため、保険金額が一律になってしまうと、小型の再突入機を開発・運用する事業者にとっては大きな負担となり得ます。
具体的な制度要件まで整理いただき、とても示唆が大きいです。申請の重複を極力減らすことと、再突入機の仕様に応じたリスクベースでの二階建て(民間保険+政府補償)が重要、ということですね。 ここまでのお話を踏まえて伺いたいのですが、再突入許可制度が整備されない状態が続くと、日本の事業者はどんな選択(例:海外での実証・運用に寄せる、開発の優先順位を下げる等)を取りやすくなると見ていますか?
既に再突入機を開発している事業者としては、海外での実証・運用を本格的に検討することになります。これから再突入機を開発することを考えている事業者としては、開発の優先度を下げるかそもそも開発しないということも想定されます。
海外での実証・運用に寄る、あるいは開発自体が見送られる可能性まで出る、ということですね。日本として技術と産業の芽が外に流れるリスクがある、というご指摘だと受け止めました。 最後に確認です。もし「再突入許可制度の協議開始」を具体化するなら、いつまでに(どのタイムラインで)動き出すのが現実的だと感じますか?
日本においても民間事業者による再突入行為が2027年にも開始を予定されていることから、2027年の通常国会での法改正がベストです。一方で、2026年に法改正されて直後の再改正はハードルが高いとかんがえられることから、まずは2026年度、宇宙政策委員会の宇宙活動法改正ワーキンググループにおいて、再突入許可制度の検討を改めて行うべきです。
具体的な年次まで含めたご提案ありがとうございます。2027年に民間の再突入が始まり得るので、2027年通常国会での改正を狙いつつ、少なくとも2026年度に宇宙政策委員会のWGで再突入許可制度の検討を再開すべき、というお話でしたね。 ここまでの内容をまとめ、レポートを作成します。
本日はお時間ありがとうございました。伺った内容をもとに、インタビュー要約のレポート案です。ご発言の意図とズレがないかご確認ください。
再突入許可に関してたくさん意見を述べました。「主な意見」の2つ目は削除して、3つ目を2つ目に移動し、新たな3つ目として再突入許可制度の導入に向けた動き出しに関する意見を追加するのはいかがでしょうか? それに合わせて冒頭の「意見の要約」も要約し直していただきたいです。
本日はご確認ありがとうございます。ご提案のとおり「主な意見」を並べ替え(2つ目を削除、3つ目を2つ目へ移動)し、再突入許可制度の“動き出し”に関する意見を新たに3つ目として追記する形で、あわせて冒頭の要約も更新しました。
「2027年に民間の再突入が始まり得るため」は「2027年頃に民間の再突入が始まり得るため」に修正していただけますか?
本日はご確認ありがとうございます。ご指定の箇所を「2027年に民間の再突入が始まり得るため」→「2027年頃に民間の再突入が始まり得るため」に修正しました。
一つ前のレポート内容の方が適切でした。元に戻せますか?
本日はご確認ありがとうございます。承知しました。一つ前のレポート内容(修正前の構成・文言)に戻した版で、要約レポート案を作り直しました。ご発言の意図とズレがないかご確認ください。
以下のレポート内容の方が適切でした。この内容に戻してもらえますか? ------- 💡意見の要約 ロケット単体打上げも許可・政府補償の対象が広がるのは説明がしやすくて助かる一方、再突入は補償も制度も弱くて資金調達の壁になりそうで心配。早めに再突入許可制度の議論を進めてほしい。 🙋基本スタンス 期待&懸念 立場 業務に関係・宇宙BD担当 立場の詳細 人工衛星を開発する宇宙スタートアップで事業開発を担当し、宇宙活動法の条文・運用も把握したうえで、資金調達や事業計画の観点から制度影響を見ている。 💬主な意見 1. ロケット単体打上げも許可・補償対象で追い風 ロケット単体だと許可対象外で政府補償が不明確になり得たが、改正で対象化。民間事業促進や宇宙条約履行の面でも良い。 2. 再突入は政府補償がなく資金調達に響く 再突入時は政府補償が付かず、保険市場も打上げより小さく再保険者も限られる。投資家懸念で計画修正・縮小に波及し得る。 3. 再突入許可制度は早期に検討開始してほしい 2027年に民間の再突入が始まり得るため、2027年通常国会での改正が望ましい。少なくとも2026年度に宇宙政策委WGで検討を再開してほしい。
本日はお時間ありがとうございます。ご提示いただいたレポート内容(意見の要約/主な意見1〜3の構成・文言)に戻した版として、下記に反映しました。ご発言の意図とズレがないかご確認ください。
[ ------ 💡意見の要約 ロケット単体打上げも許可・政府補償の対象が広がるのは説明がしやすくて助かる一方、再突入は補償も制度も弱くて資金調達の壁になりそうで心配。早めに再突入許可制度の議論を進めてほしい。 🙋基本スタンス 期待&懸念 立場 業務に関係・宇宙BD担当 立場の詳細 人工衛星を開発する宇宙スタートアップで事業開発を担当。宇宙活動法の条文・運用も把握したうえで、資金調達や事業計画の観点から制度影響を見ている。 💬主な意見 1. ロケット単体打上げも許可・補償対象で追い風 従来はロケット単体だと許可対象外で政府補償が不明確になり得たが、改正で対象化。民間事業促進や宇宙条約履行の面でも良い。 2. 再突入は政府補償がなく資金調達に響く 再突入時は政府補償が付かず、保険市場も打上げより小さく再保険者も限られる。投資家懸念で計画修正・縮小に波及し得る。 3. 再突入許可制度は早期に検討開始してほしい 2027年頃に民間の再突入が始まり得るため、2027年通常国会での改正が望ましい。少なくとも2026年度に宇宙政策委WGで検討を再開してほしい。
本日はお時間ありがとうございました。いただいた内容(ご提示の版)に基づき、要約レポート案を整形して反映しました。ご発言の意図とズレがないかご確認ください。
「2027年」→「2027年頃」に修正しました。以下をレポート内容にしていただけますか? ----------- 💡意見の要約 ロケット単体打上げも許可・政府補償の対象が広がるのは説明がしやすくて助かる一方、再突入は補償も制度も弱くて資金調達の壁になりそうで心配。早めに再突入許可制度の議論を進めてほしい。 🙋基本スタンス 期待&懸念 立場 業務に関係・宇宙BD担当 立場の詳細 人工衛星を開発する宇宙スタートアップで事業開発を担当。宇宙活動法の条文・運用も把握したうえで、資金調達や事業計画の観点から制度影響を見ている。 💬主な意見 1. ロケット単体打上げも許可・補償対象で追い風 従来はロケット単体だと許可対象外で政府補償が不明確になり得たが、改正で対象化。民間事業促進や宇宙条約履行の面でも良い。 2. 再突入は政府補償がなく資金調達に響く 再突入時は政府補償が付かず、保険市場も打上げより小さく再保険者も限られる。投資家懸念で計画修正・縮小に波及し得る。 3. 再突入許可制度は早期に検討開始してほしい 2027年頃に民間の再突入が始まり得るため、2027年通常国会での改正が望ましい。少なくとも2026年度に宇宙政策委WGで検討を再開してほしい。
本日はお時間ありがとうございます。ご提示いただいた内容(「2027年」→「2027年頃」修正反映版)をレポート内容として反映しました。ご発言の意図とズレがないかご確認ください。