選挙での偽情報やAI画像に、SNS会社の対応を求める法律
選挙でのネット利用の広がりに対応する改正法です。AIで作った画像の表示ルールを作り、規模の大きいSNS会社にも、ウソの情報の影響を減らす対応を求めます。
公職選挙法及び特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律の一部を改正する法律案
この記事は現在、複数有識者によるレビュー中です。今後内容が変更されることがあります。
👉 審議のステータス
この法律は、選挙のルールを定める公職選挙法と、SNSなどでの情報の流れを扱う法律(情報流通プラットフォーム対処法)の2つをまとめて変えるものです。
電子メールでの選挙運動のルール、AIで作った画像への表示ルール、ネットを使う人の心がけ、SNSを運営する規模の大きい会社に求める対応という、いくつかの内容を含みます。
2026年7月13日に成立し、7月17日に公布されました。新しいルールが始まるのは2027年3月1日からです。
会社が実際にどんな対応をすればよいかは、これから国が作る指針で決まります。
具体的にどんな対応が必要だと思うか、みらい議会では広くご意見を募集しています。
🎯この法律のポイント
電子メールで選挙運動の文書を送るときのルールを、ホームページやSNSと同じにする
今は、ホームページやSNSは候補者や政党だけでなく一般の人も選挙運動に使えます。
一方で電子メールは、なりすましや迷惑メールの心配があるため、送れるのは候補者や政党などに限られていて、一般の人は使えません。
この改正では、電子メールだけにあったこの制限をなくし、ホームページやSNSと同じルールにまとめます。
AIで作った画像を選挙の文書に使うときは、その旨を表示する
AIで作ったり加工したりした画像や映像を、選挙運動などの文書に使ってインターネットで配る人は、それがAIで作ったものだと画面に表示しなければならなくなります。
加工がごくわずかなものや、本物の写真と見間違えるおそれのないものは対象から外れます。
実在の人物が話していないことを話しているように見せる偽の画像や映像(ディープフェイク)が広まっているため、見る人が判断しやすいようにするものです。
選挙でネットを使う人の心がけを定める
選挙に関してインターネットを使う人は、候補者についてウソの情報を広めたり、事実をゆがめて広めたりして選挙の公正を害さないようにする、という心がけを定めます。
これは罰則のあるルールではなく、利用者に求められる心がけを示す規定です。
SNSを運営する規模の大きい会社に、選挙をゆがめる情報がもたらす悪い影響を減らす対応を求める
SNSを運営する規模の大きい会社に対して、選挙の公正を害するおそれのある情報が広がることで生じる悪い影響を減らすため、サービスに応じた対応を行うよう求めます。
法律には、いつからいつまでという期間の決まりは書かれていません。選挙の期間中だけの決まりではありません。
総務大臣は、今後、会社がどのような対応をすればよいかの指針を作って公表します。ただし、具体的にどのような対応を行うかは会社自身の判断に委ねられています。
どんな対応をするかの例は、これから作る指針で示される
この指針は、この記事を書いている時点ではまだできていません。各党の話し合いを経て、その結果をもとに総務大臣が作ることになっています。
衆議院の決議では、例として7つの対応が挙げられています。
収益化を止めること、お金がもらえるアカウントであることの表示、本人確認が済んでいることの表示があります。
AIで作った内容だという表示や、AIで作った内容を見つけて利用者に警告を出すことも挙げられています。
公式サイトなど信頼できる情報を見やすい場所に出すことや、選挙に関わる人たちと連携することも含まれます。
これらは、投稿を消させるものではなく、表示のしかたやお金の仕組みに関わる対応が中心です。
「対応をどう実施したか」の公表ルールを追加
SNSを運営する規模の大きい会社には、「対応をどう実施したかを毎年1回公表しなければいけない」という新しいルールが加わります。
これにより、各社がどんな対応をしたかを外から確認できるようになります。
どんな対応をするかは会社の判断に任されていて、国が処分したり罰したりする対象にはなっていません。そのぶん、この公表内容が外から確かめる手がかりになります。
✏️この法律が必要な理由
選挙でインターネットやSNSを使うことが当たり前になったから
2013年からインターネットを使った選挙運動ができるようになり、ホームページやSNS、動画などを使った選挙運動が広がりました。
一方で電子メールだけは、送れるのは候補者や政党に限られたままで、実際の使い方とのずれが問題になっていました。
AIで作った偽の画像や動画が選挙に影響するおそれがあるから
AIが広まり、実在の人物が話していないことを話しているように見せる画像や映像を、簡単に作って広められるようになりました。
選挙でも候補者や政党に関する加工された画像や動画が広がる例が指摘され、有権者が本当かどうか判断しにくくなっています。
AIで作った画像にその旨を表示すれば、見る人が情報の出どころを判断する手がかりになります。
選挙の情報の多くがSNS上で流れているから
選挙に関する情報の多くは、SNSなどのサービス上で広がります。
選挙の公正を害するおそれのある情報が広がることで生じる悪い影響をどう減らすかが課題になっています。
すでにある法律の仕組みを使って、SNSを運営する規模の大きい会社にも選挙の公正のための対応を求める必要があるとされています。
自動での拡散や、お金がもらえる仕組みが後押ししているから
国会では、プログラムを使って自動でリポストや投稿を繰り返し、世論を機械的に動かしかねない問題が指摘されました。
また、動画が見られるほど広告のお金が入る仕組みが、中傷やウソの情報を広げる動機になっているという指摘も出ました。
発信する人の心がけや、投稿ごとの後始末だけでは、こうした仕組みの問題には手が届きません。サービスの作りそのものを持っている会社に役割を求める、というのが今回の考え方です。
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👀これからの課題
AIで作った画像かどうかの線引きが分かりにくい
表示が必要なのは、AIで作ったり加工したりした画像のうち、加工がごくわずかなものなどを除いたものです。
どこまでがAIによる加工にあたるか、どの加工が「ごくわずか」なのかの線引きは、実際には判断が分かれる場面が出てくるという指摘もあります。
偽情報への対応と、自由に意見を言えることをどう両立するか
ウソの情報への対応は、自由にものを言える権利との両立に気をつける必要があるという指摘があります。
何が「ウソ」「事実をゆがめた情報」にあたるかの判断は難しく、正当な批判や風刺まで控えさせてしまわないか、という心配もあります。
国会では、選挙の直前に都合の悪い意見が消されたり、収入を止められたりして、事実上の言論の統制につながるおそれがあるという指摘も出ました。
国が選挙運動に関わる指針を作ることに問題はないか
選挙運動のルールは、本来は国民と国会が決めるべきものだという意見があります。
国の役所が作る指針が実質的な基準になることへの心配が国会でも出ました。
これに対しては、指針は各党の話し合いを経て、その合意をもとに総務大臣が作ることになっていると説明されています。
罰則のない心がけや対応で、どこまで効果があるか
ネットを使う人の心がけには罰則がなく、SNS会社の対応も指針に沿って各社が判断する形です。
罰則のない仕組みで選挙の公正をどこまで守れるかは見えにくいという見方もあります。
一方で、罰則によらない対応と、情報が正しいか確かめる取り組みや利用者の理解を深めることを組み合わせるべきだという意見もあります。
よくある質問
Q. AIで作った画像はすべて表示しなければならないのか
A. いいえ、すべてではありません。
表示が必要なのは、選挙運動などの文書にAIで作った画像や映像を使ってインターネットで配る場合です。
加工がごくわずかなものや、本物の写真と見間違えるおそれのないものは対象から外れます。
Q. 会社への対応の義務は、選挙の期間中だけか
A. いいえ、法律に期間の決まりは書かれていません。
AIで作った画像の表示については、次の2つが対象です。
- 選挙運動に使うもの
- 選挙の届出が始まる日(公示・告示の日)から投票日までに出す、ある候補者を当選させないための活動(落選運動)に使うもの
Q. 指針はいつ決まるのか
A. この記事を書いている時点ではまだできていません。
各党の話し合いを経て、総務大臣が作って公表することになっています。
新しいルールが始まる2027年3月1日より前に作って公表することもできます。
Q. 一般の有権者も罰せられるのか
A. 今回新しく定められたネット利用者の心がけは、罰則のあるルールではありません。
ただし公職選挙法には、もともとウソの情報を広めた場合の罰則があります。
ネットでの発信にも、その罰則はそのまま当てはまります。
🙋影響を受ける人
- 候補者・政党・選挙運動をする人:電子メールとSNSのルールが同じになり、AI画像の表示も必要になります。
- 一般の有権者・ネットを使う人:選挙でウソの情報を広めて公正を害さない心がけが定められます。
- SNSを運営する規模の大きい会社:選挙をゆがめる情報への対応と、毎年の実施状況の公表が求められます。
- お金がもらえる仕組みを使っている人:規約を破ると収入を止められる可能性があります。
説明の詳しさを
いつでも切り替えられます

🌐関連リンク
- 総務省:公職選挙法及び情報流通プラットフォーム対処法の一部改正について
- 総務省:改正法の概要(PDF)
- 衆議院:議案の経過情報(第221回国会衆法第26号)
- 衆議院:議案本文(第221回国会衆法第26号)
- 衆議院:議案要綱(第221回国会衆法第26号)
- 国立国会図書館:国会会議録 衆議院 政治改革に関する特別委員会 第221回国会 第8号(2026年6月25日)
- 参議院:附帯決議(PDF)
- 総務省:情報流通プラットフォーム対処法
- 総務省:インターネット等を利用する方法による選挙運動の解禁等
- e-Gov 法令検索:人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律
掲載コンテンツについて
掲載されている法案情報は、国会に提出された議案などの公開情報を基に、チームみらいがAIを活用しながら背景情報を整理したものです。掲載法案は主に、内閣提出法案(閣法)を対象としております。
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