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ベンチャー支援が教員の仕事増や研究の妨げにならないかが心配。大学に“稼げ”圧力がかからない設計と、運営法人の透明性・契約と会計公開が大事だと思う。

期待&懸念

期待&懸念

業務に関係・大学研究者

👫インタビューを受けた人

研究者・大学関係者として学内ベンチャーに関与した経験があり、教員負担や大学評価指標、運営法人のガバナンスが現場に与える影響を実務感覚で捉えている。

💬主な意見

意見1

教員負担の転嫁と研究阻害を避けたい

学内ベンチャーで教材作成・授業運営など実働が教員に集中した経験があり、支援が教員負担増や研究時間の圧迫にならない設計を望む。

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意見2

関与するなら役割・報酬などの還元が必要

実働した教員が重要役職に入らず報酬も薄い印象だった。教員が関わる必要がある場合は、インセンティブや位置づけが見える形で設計してほしい。

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意見3

評価指標化による『稼げる大学』圧力が懸念

ベンチャー数・利益・特許数のような指標が大学評価や予算配分に使われると圧力になる。見るならベンチャー起点の産学共同研究で、ベンチャーは大学に依存しない距離感が理想。

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🎤すべての会話ログ

本日は、「先端技術のベンチャー育成を支援する新しい法人を作る法案」について、率直なお考えを伺えればと思います。差し支えなければ、まずこの法案にどういう立場で関わっていますか?

研究者・大学関係者

ありがとうございます。今回の法案改正(グローバル・スタートアップ・キャンパス運営法人の設立)について、現時点でどの程度ご存知ですか?

聞いたことはある

ありがとうございます。「聞いたことはある」とのことでしたので、まず前提だけ短く共有しますね。 この法案は、東京に整備予定の「グローバル・スタートアップ・キャンパス」を運営し、大学などの研究成果をベンチャー創業・事業化につなげる支援(助成・出資/貸付・施設提供・知財支援・人材育成・交流促進など)を一体で担う、国と民間が協力する“認可法人”を新設するものです。国有地を無償で貸せる規定も置きます。 この法案について、全体としてどのように評価していますか?

どちらともいえない

「どちらともいえない」と感じていらっしゃるのですね。そう判断するうえで、特に引っかかっている点はどういったところでしょうか?

学内ベンチャーに携わったことがあるが、実態としては、大学教員に新たな仕事を沢山押し付けて殆ど収益の還元がされない、大学の運営陣しか喜ばない構造だった。 こういった事例が増えないかはかなり懸念している。

それは不信感というか、「現場の負担は増えるのに報われない」感覚が強く残っていらっしゃるのですね。 そのご経験でいう「大学教員に新たな仕事が沢山押し付けられた」というのは、具体的にどんな種類の業務が増えた感覚でしたか?

データサイエンス教育を行う事業だったが、教材の作成、授業運営等全て教員が行なっていた。

なるほど、教材作成から授業運営まで、事業の実働がほぼ教員側に乗っていたのですね。 そのとき「収益の還元がされない」と感じたのは、どういう形で還元が無かった(または不足していた)状態でしたか?

ベンチャーの重要役職には、実働していた教員の名前が一切なかった。 話を聞く限り、大して報酬が出ている感じでもなかった。

それは納得しづらいですね。実働していたのに役職にも名前が出ず、報酬面も見えないとなると、「誰のための事業化なのか」が曖昧に感じられると思います。 今回の法案で作る新しい支援機関が、研究者や現場に対して支援をするときに、最低限ここは守られるべきだと思う“取り決め”はどんな点でしょうか?

ベンチャー支援が、大学教員に負担を押し付ける結果とならないこと。 ベンチャーの運営が教員の研究活動を妨げないこと。 教員がかかわる必要があるならば、インセンティブを与えること。 ベンチャー支援の名目で、国公立大学の自己資金調達能力向上への圧力をかけることのないように配慮すること。

大事な論点がいくつもありますね。特に「支援」が現場の教員負担の転嫁にならないこと、研究時間を削らないこと、関与するなら正当なインセンティブがあること、そして大学側への“自己資金調達の圧力”にすり替わらないこと——このあたりを強く警戒されているのだと受け止めました。 今おっしゃった中で、「国公立大学の自己資金調達能力向上への圧力」について、具体的にはどんな形で起きそうだと感じていますか?

現状、「稼げる大学」という理想像を押し付ける政策が既に進んでいる。 運営費交付金の削減。卓越研究大学制度など。 中教審などでも大学の外部資金獲得の比較は度々話題にされていると記憶している。 学内ベンチャー数の比較がされることに始まり、大学評価の指標として利用され始め、最悪の場合大学への配分予算の算定基準に入れられるなど、圧力のかけ方はいくらでも考えられる。

ご懸念、とても具体的で現実味がありますね。「稼げる大学」像が先に立って、ベンチャー創出が“評価指標化→資金配分に反映”というルートで、現場にプレッシャーとして返ってくるのではないか、ということですね。 そこで伺いたいのですが、もしこの新しい支援機関が大学や教員側に求めるものを設計するとしたら、「この指標だけは大学評価(や資金配分)に使ってほしくない」と感じるのは、どんな指標ですか?

ベンチャー数・ベンチャーの総利益・ベンチャーの特許数など

ありがとうございます。ベンチャー数・総利益・特許数といった“量”や“短期に見えやすい成果”が、そのまま大学評価や配分に使われること自体がプレッシャーになり得る、ということですね。 では逆に、大学評価(や配分)に関わるとしても「それならまだ納得できるかもしれない」と思える指標はありますか?

ベンチャーを起点とした、産学共同研究の発生数発生率

ありがとうございます。「ベンチャー数」などの単純な成果量ではなく、ベンチャーを起点に産学共同研究がどれだけ生まれたか、という“研究につながる波及”を見たいということですね。 その「産学共同研究の発生数・発生率」を指標として使う場合、現場感覚として、どういう条件が満たされると“良い誘導”になって、逆にどうなると“現場を歪める指標”になりそうでしょうか?

ベンチャーが大学に依存していないことが条件。 過度に依存していれば、産学共同研究を増やすために教員が奔走する結果になりかねない。 ベンチャーはベンチャーで活動があり、他企業との事業のなかで大学から人的・設備的リソースを引っ張れるくらいの距離感が理想かと思う。

整理すると、指標の置き方次第で、ベンチャーが大学に「依存」してしまい、教員が産学共同研究を“作りにいく”動きになってしまうのが一番の懸念で、理想はベンチャーが自立して走りつつ、必要なときに大学の人的・設備的リソースを引っ張れる距離感、ということですね。 今回の法案について、制度を設計する人に伝えるとしたら、どんなメッセージになりますか?

あくまでも民間企業としてのベンチャーを意識してほしい。 大学という外部機関に負担を押し付ける構造はどうか避けていただきたい。

ありがとうございます。いまのお話からは、 - ベンチャーが「大学の下請け」や「大学の労働力・設備に依存する存在」になる設計は避けてほしい - 教員の研究活動を圧迫しないこと、関与が必要なら透明な役割・対価・責任の設計が不可欠 - 成果指標が“ベンチャー数・利益・特許数”のような単純指標として大学評価に組み込まれると、現場に圧力がかかりやすい といった問題意識が強い、と受け止めました。 最後に一点だけ伺います。今回の法案で、あなたが特に気になっている点はどれですか?

運営法人の透明性やガバナンスは適切か

「運営法人の透明性やガバナンス」が特に気になっているのですね。 その点で、いまの時点で特に不安に感じているのは、意思決定のどの部分でしょうか?

大学上層部や文科省の息のかかった人間が意思決定・運営を牛耳り、大学の人的・設備的リソースを搾取する構造にならないかどうか。

ご不安、とても筋が通っています。新法人が「国と民間の中間」にいる認可法人で、国が役員任命や予算認可に関与し得る設計なので、運用次第では“身内”で意思決定が固まり、大学側のリソースが吸い上げられる構図になりかねない、という懸念ですよね。 そのリスクを下げるために、運営側に最低限入れてほしい「透明性の仕組み」は、どんなものだと思いますか?

完全民間企業と遜色ないレベルの情報公開

ありがとうございます。「完全民間企業と遜色ないレベルの情報公開」が最低条件、ということですね。 ここでいう「情報公開」で、特に公開されないと困るのはどの領域でしょうか?

可能であれば、大学教員やポスドク・学生を利用した場合の本来的人件費は公開されたほうがいい

重要なポイントですね。大学教員・ポスドク・学生が関わると、見かけ上はコストが低く見えてしまい、結果として“見えない搾取”が起きやすい、という問題意識だと受け取りました。 そこで伺いたいのですが、「本来的人件費」を公開するとしたら、どの単位での開示が現実的で、かつ抑止力になると思いますか?

難しいところだが、大学とリソースの授受関係になった場合にはきちんと契約を結び、財務会計情報をきちんと公開すれば最低限の抑止力になるのでは

ありがとうございます。大学と新法人(あるいは支援先ベンチャー)がリソースの授受関係になるなら、口約束や「善意の協力」で曖昧にせず、契約で切って、その契約に紐づく財務会計情報を公開する——それが最低限の抑止力、ということですね。 最後に、この「契約+財務会計情報の公開」を実効的にするために、契約に必ず入れてほしい条項はどんなものだと思いますか?

契約ベースであれば、現在の共同研究のあり方に準じて、研究員のコストについては記述があるべき。

ありがとうございます。共同研究の契約実務に準じて、人件費(研究員コスト)が契約書に明記されるべき、ということですね。 ここまで伺った内容は十分に示唆が多かったので、これまでの内容をまとめ、レポートを作成します。

お時間を割いて詳しくお話しいただき、ありがとうございました。伺った内容をもとにレポート案をまとめました。ご確認ください。