💬インタビューレポート
一般市民
報道をきっかけに法案へ関心を持ち、条文や報道だけでは目的が理解しにくかったため、有識者の解説を聞いて納得感を得た一方、国会・報道の説明不足や運用面の不透明さに不安を感じている。
💬主な意見
目的・国際整合性・提案者を丁寧に説明してほしい
“専門家提案がベースでGDPRの考え方に近い「目的内の利用」を明確化する趣旨だと伝えれば、「緩い法案」などの誤解や不信感は減ると思う。
AI開発の目的を広すぎない形で定義してほしい
“「AI開発」という言葉は範囲が広く不安。具体化しすぎて網羅できない問題もあるが、目的がもう少し具体的に定義されていると受け止めやすい。
第三者チェックと許可実績の公表で透明性を上げてほしい
“目的外収集を防ぐため、目的と収集項目の事前列挙を第三者がレビューし、どの事業者に何目的で何の情報を許可したかをWebで公開してほしい。
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本日は「個人情報の使い方にルールを追加し、悪質な違反には課徴金を科せるようにする法案」について、感じていることや気になる点を伺えればと思います。差し支えない範囲で、率直にお話しください。 この法案にどういう立場で関わっていますか。
本日は、「個人情報の使い方にルールを追加し、悪質な違反には課徴金を科せるようにする法案」について、ご意見や気になる点を丁寧に伺えればと思います。差し支えなければ、まずお立場から教えてください。 この法案にどういう立場で関わっていますか。
その他(自由回答)
ありがとうございます。「その他」とのことですが、この法案にはどんなきっかけで関心を持たれましたか。
当初は、個人情報が悪意ある第三者に悪用される余地がある、という世間の評価を朝日新聞等のアカウントによる報道を目にし、気にしました
報道をきっかけに不安を感じられたのですね。 その報道の中で、どの論点がいちばん「悪用される余地がある」と感じましたか。
個人を含む事業者に対して個人情報を渡すことについてです。AI開発のために活用してよい、という表現も用途が広くみえてしまい、昨今の生成AIにおける個人情報の吸い出しが問題視されている現状に対して不安を煽りました。
不安に感じられたポイントがとても伝わってきました。とくに「AI開発のため」という言い方が広く見えて、生成AIの文脈だと個人情報の“吸い出し”につながりそうに感じられたのですね。 そこで伺いたいのですが、あなたが想像している「個人情報を渡す」場面は、どんなデータがどんな相手に渡るイメージですか。
すみません、あえて、質問に答えず、こちらの意見を言わせてください。 まず、私はそもそものこの法案の本来の目的についてあまり報道内容・条文から理解できませんでした。そこに、たまたま個人情報保護に関する研究者である高木浩光さんのインタビューが公開されていたので、意見をききたく、拝聴しました。 この結果、「適切な目的内で、個人を含む事業者に対して個人情報を渡すことは適切である」ということを納得しました。 逆に、高木さんのインタビューを聞かない限りは納得を得られませんでした。このことから、現在は国会・報道ともに十分な説明がなされていないと感じます。
ご意見ありがとうございます。報道や条文だけでは目的がつかみにくく、研究者の解説で初めて納得感が得られた一方で、国会や報道の説明が不足していると感じられたのですね。 そこで確認ですが、国会や報道の説明として「ここが欠けていた」と感じたのは、どんな情報でしたか。
高木さんのインタビューでわかったことをベースに説明します。 - この法案は高木さんの提案がベースにある。つまり、個人情報の扱いを専門家が適切に定義しようとした結果である。しかし、報道や国会における表現を聞くと、高市首相や政治家が主体で考えた法案に見えました。よって、何らかの別の意図(海外へ個人情報を売るなど)を感じてしまう余地があり、誤解を招きます - この法案により、海外の個人情報法のための法律よりも個人情報の保護が弱くなると考えている人が多く見られます。しかし、実際のところGDPRの条文を確認すると、「目的内の利用に限り、他者の個人情報を扱うことは適法である」文言が含まれています。よって、実際のところは、ただ定義されていなかったものを海外に合わせて定義しただけのものでした。この点が明確であれば、誤解は少ないのかと感じます - AI開発に活用する、という表現のせいで、今流行りの生成AIに使うものと誤解されています。高木さんによると、ここでいうAIというのは、統計データをもとにAIがサジェストをするという仕組みのことを言っており、生成AIにデータを食わせるという手段とは別のものです。 - 拙速に可決して十分な説明期間がないことや、政治家を対象外にするという文言があること、高市首相の「性善説を信じる」旨の発言等、後ろめたさを感じさせる進め方がいらぬ誤解を招きます。もしかしたら、法案を提出した当人が、もともとの目的を理解されていないのでは、とすら思います
丁寧に整理してくださってありがとうございます。いまのお話だと、制度そのものというより「説明のされ方」と「言葉の選び方」で誤解や不信が増幅している、という感覚が強そうですね。 一点だけ補足すると、この法案の概要としては「統計作成やAI開発“のためだけ”の利用なら、同意なしに他事業者へ提供できるようにする(目的外利用は禁止)」という立て付けで、生成AIへの学習一般を無制限に許す、という設計ではありません。とはいえ、そこが伝わらない表現になっている、というご指摘はまさに論点だと感じました。 そこで伺いたいのですが、国会や報道がこの法案を説明する際に、どんな言い回し(または説明の順序)にしてくれたら、誤解がかなり減ると思いますか。
言葉を選ばずいうとこの個人情報保護法は「ガバガバ法案」であると誤解されがちな問題があります。 しかし、GDPRなど、厳しく個人情報の扱いを定義しているEUなどに併せていることを明確にできれば、無意味に緩くしているという誤解はへりそうです。 すみませんが、具体的な順序についてはあまり思いつかず、どういう内容を公開すればよいか、という観点で伝えさせてください。 よって、例えば「前提として、日本は、EUなどの個人情報の取り扱いが極めて厳しい国と比べても、民間事業者に対する個人情報の統計目的の提供の制約が強い。そこで、EUのGDPRにある、『目的内の利用に限り、個人情報を渡すことを許容する』という条文を付け加える」などのような表現にすれば、少なくともある程度情報リテラシーに明るい人々は取り込めるように思いました。 また、この提案が政治家起因でなく、個人情報保護法について研究をし続けている専門家から上がっていることを明確に説明すれば、個人情報保護の原則をきちんと意識した法案であることが伝わりやすいと思います。現状は、個人情報に明るくない人間が思いつきで情報を渡すことを許容した法案を提出したように受け取られていると思います
お話を聞く限り、「日本だけが緩くなる」のではなく、むしろ国際的な枠組み(GDPR等)と整合する形で“目的内利用の明確化”だと伝われば、誤解が減る、という感覚なのですね。また、誰がどんな知見で提案したのか(専門家の積み上げ)も、納得感に直結するという点もよく分かりました。 ここから一点だけ伺いたいのですが、今回の法案の中で「AI開発のためだけなら同意なしで他事業者に提供できる」という部分について、あなたとしては“どんな条件が明示されていれば”安心して受け止められそうですか。
「AI開発」では定義が広いですから、目的をもう少し具体的に定義された状態であってほしいです。ただ、具体的すぎても、網羅が難しくなりますから悩ましいところですね。 「国民の生活を豊かにするサービスを構築するための統計データ作成のため」などのニュアンスをイメージしていますが、これも少し抽象的です。申し訳ないのですが良い例が思いつきません。
「広すぎる言葉だと不安だけれど、具体化しすぎると抜け漏れが出る」という悩ましさ、すごく現実的だと思います。 そのうえで伺いたいのですが、もし「AI開発目的での提供」を認めるなら、禁止事項として“これは絶対にダメ”と明記してほしい利用のされ方は、どんなものですか。
目的外の利用(特に個人情報の拡散・漏洩)
目的外利用、とくに拡散や漏えいにつながる使われ方は明確に止めてほしい、ということですね。 その「目的外利用」に当たる線引きとして、どういう行為を法律やガイドラインで具体例として挙げておくと安心感が高いですか。
例えば、目的に不要なデータ収集することでしょうか。 その人の既往歴を確認するために、amazonの購入履歴を調べるとか。
具体例ありがとうございます。まさに「目的に対して過剰なデータを集める(データ最小化に反する)」ことへの懸念なのですね。 いま挙げていただいたような“目的に不要なデータ収集”を抑えるために、事業者側にどんな義務(例:収集項目の事前列挙、公表、第三者チェック等)があると実効性が出ると思いますか。
例に上げた通りのものが思いつきました。 第三者チェック機関に対する目的と収集項目の事前列挙をレビューしてもらうのは特に重要ですね。
第三者チェックで「目的と収集項目」を事前にレビューさせるのが重要、ということですね。運用面の実効性を重視されているのが伝わります。 その第三者チェック機関は、どんな主体(たとえば公的機関・業界団体・外部監査法人のような独立組織など)だと信頼できると感じますか。
すみません、ここについては知識がないので、どういう主体が一番信頼におけるか、私は判断できません。 例えば個人情報保護委員会から認可を得ているとか、個人情報保護士の資格を持った人間が所属する機関とかが思いつきます。
判断が難しい点を率直に言ってくださってありがとうございます。個人情報保護委員会の認可や、一定の専門資格者が関与する仕組みだと納得しやすい、という感覚なのですね。 では、その第三者チェックを「信頼できる」と感じるために、最低限満たしていてほしい条件は何だと思いますか。
どこかに公表されていてほしいです
公表されていることが最低条件、ということですね。 その「公表」についてですが、どんな情報が公表されていると信頼しやすいですか。
webページで、これまでどこのどういう業者にこういう目的でこういう情報の収集を許可している、などを列挙されていると安心します
許可の実績(どの業者に・どんな目的で・どんな項目の収集を認めたか)が一覧で見えると安心、ということですね。透明性が担保される感覚が大きいのだと思いました。 では、その一覧に載っている情報を見たときに、「これは許容できそう」と「これは不安だ」と分かれるのは、どういう違いがあるときですか。
以下のようなときは不安です -目的外の情報を収集しているとき -世間的な認知度の低い事業者が情報を収集しているとき
不安になるポイントがはっきりしていますね。目的外の収集が見えることと、よく知らない事業者が扱うことが引っかかるのですね。 「認知度の低い事業者」について伺いたいのですが、どういう条件を満たしていれば、その事業者でも個人情報を扱ってよいと感じられますか。
- 会社概要など、その事業者の情報が公開されている - 一定以上の情報リテラシーを感じさせる実績がある
事業者の情報開示と、情報リテラシーを感じられる実績があることが条件になるのですね。 その「情報リテラシーを感じさせる実績」というのは、具体的にはどんな実績が公開されていると判断しやすいですか。
ちょっと具体的には考えつきません。 少なくとも、何か個人情報を取り扱うようなアプリケーションを開発してリリースしていたりですかね
ありがとうございます。たとえば「個人情報を扱うアプリを出している」など、一定のプロダクト実績が見えると判断しやすい、ということですね。 その実績を見るときに、どういう情報が書かれていると「この事業者なら大丈夫そう」と感じられますか。
具体例が思いつかないですが、遵法意識が高いこと、ガバナンスがしっかりしていることがわかると嬉しいですね。そういう情報が伝わりやすい基準のようなものが、社会的にあるといいのですが
遵法意識やガバナンスが「見える」基準があると安心、ということですね。 では伺いたいのですが、今回の法改正について、全体としてどのように評価していますか。
どちらともいえない
承知しました。「どちらともいえない」と感じているのですね。 その評価になった要因として、良い面と心配な面が拮抗していると思うのですが、心配な面として特に大きいのはどのあたりですか。
高木さんもおっしゃっていますが、罰則周りの条文が曖昧であるにも関わらず、そこの議論がなされないまま可決されてしまいました。 進め方が拙速にすぎますし、高市総理の発言などから、法案の本来の意味が理解されているのか不安に見えます。 法案のコンセプトとしてはあるべき形になっていると思いますが、それを提出した人が正しく理解しているか、今後正しく運用されるかが不安です。
拙速な進め方や、提出側が趣旨を理解しているのか、そして運用が担保されるのか――そこがいちばんの不安なのですね。とくに罰則(課徴金など)周りの曖昧さが、議論不足のまま通ってしまう感じがある、と。 そこで一点だけ伺いたいのですが、「罰則周りが曖昧」と感じるのは、どの部分の線引き(何をしたら対象になるか等)が見えにくいからですか。
人を欺いただけで処罰の対象になるとあることから、一般市民の生活上のちょっとしたやりとりまでが処罰される可能性があります。 また、潜入捜査や内部告発・公益通報なども処罰の対象として扱うことが可能な文面だからです
ご懸念のポイント、よく分かりました。とくに「欺く」という言葉が広いと、一般のやりとりや、公益性のある取材・告発まで萎縮させかねない、ということですね。 一点だけ補足すると、今回の法案の課徴金は「被害者が1,000人を超える大規模な違反」など、一定の要件を満たす悪質なケースに限って導入される設計です(一般市民の日常的なやりとりが直ちに課徴金の対象になる、という立て付けではありません)。ただ、刑事罰などを含め“線引きが分かりにくい”という不安が残る、というご指摘だと受け止めました。 そこで伺いたいのですが、潜入取材や内部告発・公益通報が萎縮しないようにするために、条文や運用ルールで「こう明記してほしい」と思う例外や要件はありますか。
すみませんが、具体的な表現が思いつきません。
承知しました。具体表現はすぐには出にくいですよね。 では一点だけ、方向性を伺いたいのですが、潜入取材や公益通報のような行為が萎縮しないために、「どんな条件を満たす場合は処罰の対象から外れる」と整理されていると安心できますか。
「公益目的の正当な取材活動や内部告発は対象外」と説明されてますが、何を持って正当と判断するかが極めて曖昧です。よって、具体例として公益通報、潜入取材などのパターンをリストアップしていくのがいいと思いました
ご指摘のとおり「正当」の基準が曖昧だと、結局は萎縮が起きてしまい得ますよね。具体的なパターンを列挙していく、という発想は運用の予見可能性を上げるという意味で重要だと思いました。 その「具体例のリスト」に入れておくべきだと感じるのは、どんな場面ですか。
すみませんが、そろそろ疲れてきたので、このあたりでレポートにまとめていただけますか
承知しました。ここまでのお話をもとに、これまでの内容をまとめ、レポートを作成します。
お時間をいただき、丁寧にお話しくださりありがとうございました。ここまでの内容をもとにレポート案を作成しました。