💬インタビューレポート
学校ICT担当
学校の学習端末・デジタル教材の導入や運用に関わる立場から、補助設計と端末性能不足で『動かない』問題を経験し、UX品質保証の制度設計を重視している。
💬主な意見
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本日は、「学校においてデジタルを含む教科書を使えるようにする法律案」について、感じていることや経験をうかがえればと思います。率直なお話で大丈夫です。 この「デジタルを含む教科書を正式な教科書として認める」法案は、あなたの生活や立場とどのように関わっていますか?
デジタル教科書って何が問題なの
気になっている点があるのですね。 デジタル教科書について、いま「問題だと思う」のはどのあたりですか?
紙の教科書どうなるの
気になりますよね。 補足すると、この法案は「紙の教科書を廃止してデジタルに統一する」内容ではなく、紙に加えてデジタルを含む教科書も正式な教科書として認めるものです。 この前提を踏まえると、紙の教科書については今後どうなってほしいと感じますか?
過去に端末のスペックが、補助額ギリギリになってしまうという、インセンティブ設計の失敗が蘇りますが。予算潤沢につけないと、同じ失敗がおこる気がする
それは嫌な記憶がよみがえりますよね。補助額に合わせて「最低ラインの端末」が選ばれやすくなる設計だと、結局現場で使いにくくなってしまう、という懸念だと受け取りました。 その「端末のスペックが補助額ギリギリになってしまった」場面では、具体的にどんな支障が出ましたか?
動かない
それは現場としては相当つらいですね。授業で「動かない」が起きると、学習そのものが止まってしまいますし、先生側の負担も大きくなりそうです。 その「動かない」は、どういうタイミングで起きやすかったですか?
UX保証や良い「UXを受ける権利」をデジタル教科書には求めたほうがいい。なぜならUXは体験そのもので、最初の体験が最悪だと、可能性があるはずなのに、ないものとされてしまう。メモリ負荷や、速度保証など、定量的な権利として、認めるべき。
おっしゃる通りで、初期体験が悪いと「デジタル教科書=使えない」という印象で可能性ごと潰れてしまう、という懸念ですよね。その意味でUXを“権利”として制度側で担保する、という発想はとても筋が通っていると感じます。 その「定量的な権利」としては、具体的にどんな指標(例:起動時間、ページ切替の反応速度、同時に開ける教材数など)を入れるのが現実的だと思いますか?
起動時間、ページ切替の反応速度、同時に開ける教材数など 全部いいですね。最低スペック端末でのユーザーテストを義務付けるなど、こうした補償をすることで、「子どもたちには、最高のUXを提供する義務」が生じ、国内のプロダクト全てが、将来的によくなっていくため、産業構造として、UXの義務を課す必要はあると思う。
とても具体的で、現場感のある提案ですね。最低スペック端末でのユーザーテストを義務化してUXを担保することで、「子どもに提供する体験の最低品質」を制度として確保する、という方向性だと理解しました。 その「最低スペック端末でのユーザーテスト」を義務付ける場合、誰がテストを実施して合否判定するのが現実的だと思いますか?
教科書メーカーじゃない?出版社が参入するより、ITメーカーが参入したほうがいいと思う。これって、メディアの変化じゃなくて、本質的に産業構造の変化なんですよ。それに気づいている人が少ない。 もちは持ち家につくらせないと。そういった抜本的な生産改革を国が支援しないと、何もわからない出版社が入ってきちゃう。
産業構造の転換として捉えていて、「体験(UX)」を作り込めるプレイヤーが担うべき、という問題意識なのですね。出版社中心だとソフトウェア開発や品質保証の筋肉が足りず、結果として子ども側の体験が犠牲になりうる、という懸念も伝わってきました。 その前提でお聞きしたいのですが、ITメーカーが参入する形にする場合、国は参入の条件として何を必須にすべきだと思いますか?
教科書メーカーとの協業必須じゃないですか?下手すると、どっちかだけで、筋力が足りないまま、作ることになりそう。
たしかに、教科の内容を担保する力と、ソフトウェアとしてのUX・品質保証の力は別物なので、協業を条件にするという考え方は自然ですね。 その「教科書メーカーとの協業」を必須にする場合、協業の中で“最終責任”はどちらが持つ形がよいと思いますか?
どっちも持つのがいいんじゃない。だって、採用基準が違うでしょう?そこに法律が介入しないと意味ない。教科書の内容を保証する第3者機関があるように、UXの品質を評価している第3者機関に国が業務を委託するのがいいんじゃない?あらゆる国のプロダクトはチェックしてから出したほうがいいと思うよ。
おっしゃる通りで、内容の妥当性(検定)と、UXや性能の品質保証は性質が違うので、第三者で評価する枠組みを別立てで持つ、という発想は筋が良いと感じます。 その「UXの品質を評価する第三者機関」に委託するとしたら、評価の結果はどう扱うのがよいと思いますか?(例:合格しないと教科書として採択できない/点数を公表して比較できるようにする など)
合格しないと教科書として採択できないでしょ。準教科書扱いになるとか。だって、それが「デジタル教科書」なはずでしょう?
基準を満たさないものは「正式な教科書」としては採択できない、という線引きが必要だということですね。そうしないと“デジタル教科書”の名に対して体験の最低品質が担保されず、現場が振り回される、という懸念だと理解しました。 その場合、UXの「合格ライン」は、どの程度の厳しさに設定するのが現実的だと思いますか?
うーん。内容より、UXの速度、保証などは定量的なので、判定しやすいと思うよ。民間の保証マークを発行している機関の基準を流用すれば十分で、多分まともな教科書企業であれば、そこの品質保証マークとかちゃんと取るよ。
たしかに、UXの速度や安定性は定量化しやすいので、合否基準として運用しやすい、という見立てですね。既存の民間の品質保証マークの基準を活用する、というのも現実的だと思いました。 その「民間の保証マーク」の基準を流用する場合、国はどこまでを必須にして、どこからを推奨(任意)にするのがよいと思いますか?
多分、これを全部推奨にして始めても、基準が明確なら、推奨基準に合わせよう採択されようとするから、淘汰されて、すべてのデジタル教科書が、合否基準を満たしたマーク付きのものになると思う。
基準が明確に見える化されていれば、最初は「推奨」でも市場と採択の圧力で自然に揃っていく、という見立てなのですね。現場にとっても選びやすくなりますし、低品質が入り込みにくくなる、という期待も理解できます。 その前提でお聞きしますが、学校や自治体が教科書を採択するときに、そのUX基準(マークやスコア)が実際にどれくらい重視される状態が望ましいですか?
逆に聞くけど、基準満たしてないのに、速度が速いとか、起きると思いますか?もう一度言うけど、これは、国内のプロダクトにとって、とてもいいこと。
ご指摘の通りで、基準が明確で、採択側もそれを見て選ぶ運用になれば、満たしていないのに「速い」と評価されて採択される、という状況は起きにくくなりますよね。産業全体の底上げにつながる、という見通しも理解できます。 では確認ですが、そのUX基準(マーク等)を採択でどの程度“必須扱い”にしたいですか?
強く優先(基本はこれを選ぶ)
了解です。UX基準(マーク等)を採択で強く優先して、原則それを満たすものを選ぶ運用が望ましい、ということですね。 その「強く優先」を制度に落とすとしたら、採択のルールとしてはどんな書き方・運用が現実的だと思いますか?
保証マークを取ることを、国が補助してもいいんじゃない?
なるほど、保証マーク取得そのものにコストがかかるなら、国がそこを補助して“良いUXに寄せる投資”を促す、という設計ですね。 その補助は、どの段階に出すのがいちばん効果的だと思いますか?
つまり、UX保証マークを取らなくても、デジタル教科書は作れるようにしておいて、必要であれば、民間のUX審査機関に依頼する補助を申請できると言うことじゃない?審査期間は独立してないといけないだろうし。
整理すると、まずは参入のハードルを上げすぎず「マークなしでも作れる」。一方で、必要に応じて独立した民間のUX審査機関に依頼でき、その費用を補助で支える、という設計案ですね。 その場合、その補助は「誰」を対象に出すのがよいと思いますか?(例:開発する企業側/採択する自治体側 など)
絶対開発する民間企業側でいいとおもう。プロダクトがマークもらえていれば採択しやすくなるんだから。懸念は全く採択されなさそうな教科書を未然に弾くコストですが、、、
開発する民間企業側に補助するのが筋、ということですね。マークが付けば採択側の判断材料になって、良いものが通りやすくなるのも納得です。一方で「そもそも採択されなさそうなもの」まで補助で審査コストを出すのは無駄になり得る、という懸念もありますよね。 その“採択されなさそうな教科書”を事前に弾くために、補助の申請にどんな条件を付けるのがよいと思いますか?
補助申請するときに、申請条件(速度など)を記入するから、自動的にわかると思うよ。デジタル庁などで申請を受け付けては?
なるほど、補助申請の時点で速度などの要件を自己申告させれば、足切りができて無駄な審査補助を減らせる、という設計ですね。受付や運用をデジタル庁のような組織が担う案も筋が通っています。 その申請条件(速度など)の自己申告について、虚偽や誇張を防ぐためにどんな確認方法があるとよいと思いますか?
基準も透明化しないとダメだから、デジタル庁に審査期間つければいいよ。ちなみに、補助申請なので、補助が要らなければ、企業は勝手に出しますよ。
透明な基準のもとで、デジタル庁が審査機能も持って確認する、ということですね。補助が必要な企業だけが申請し、補助なしで出せるところは自力で進める、という整理も納得です。 その「デジタル庁が審査機能を持つ」形にした場合、審査では具体的に何を“実機で”確認するのがよいと思いますか?
文科省が調べた、最低スペックの端末で速度計測をする。
なるほど、文科省が想定・把握している「最低スペック端末」を基準端末として、そこで起動やページ切替などの速度を実測する、ということですね。現場で起きがちな“動かない”を制度側で潰しにいける案だと思います。 その速度計測は、具体的にどんな利用シナリオ(例:授業開始直後の一斉起動、動画を含むページの表示、複数教材の同時起動など)で測るのが適切だと思いますか?
また、ソフトメーカーだけでなく、過去には法令ギリギリでハードを製品化した、メーカーの罪もある。採択する自治体側に、基準端末という概念を設けて、動かない端末を採用しないようにし、スペックに達しないものは、教育の質を保証していないという権利侵害として、それも審査する必要がある。これは、ITと出版の産業構造、ソフトとハードの産業構造、教育の質保証などに関わる抜本的な、構造変化と捉えるべき。
ハード側にも「補助額に合わせてギリギリの製品を出す」という構造的な問題があって、自治体の採択で“基準端末”を明確にし、満たさない端末は教育の質保証の観点から排除すべき、ということですね。産業構造と権利の話として捉えるべき、という視点もよく分かります。 その自治体側の「基準端末」は、どんな指標で定義するのがよいと思いますか?
国が指導しないと、スペックのばらつきが出る。スターリンクなどで十分速度が出れば、防災などにも使える端末になるので、デジタル教科書という観点のみで、考えないほうがいい。基準はデジタル庁と文科省が一緒になって考えてよ。それを計測する会社は、業務委託でいいのでは?
国が指導して基準のばらつきを抑えつつ、端末や通信は防災なども含めた“公共インフラ”として設計した方がいい、ということですね。デジタル庁と文科省が共同で基準を作り、計測は委託で回すという案も現実味があります。 その「国が指導する基準」は、全国で必ず統一すべき項目は何だと思いますか?
民間大手の通信会社の基準の流用でいいよ。効率的に動かないようなもの使わないでしょう。
既存の民間大手通信会社の基準を流用して、全国で“動かない”環境を避けられるようにする、ということですね。効率面でも納得感があります。 その通信会社の基準を流用する場合、学校の学習環境として「最低限」そろえるべき通信品質は、どんな指標で決めるのがよいと思いますか?
スターリンクで、空が見えれば使える端末にして。速度も民間流用基準でいいけど、国産の基準端末として、適当に作ってよ
ご提案としては、通信はスターリンクのように環境依存を減らして、空が見えれば使える前提に寄せたい、ということですね。 その上で伺いたいのですが、「国産の基準端末」を作るとしたら、国はそれをどういう形で用意するのが現実的だと思いますか?
教科書なんで、基準があるでしょ。
基準端末にも“教科書と同じように基準が必要”という感覚なのですね。 その「基準」は、端末のどの部分について定めるのがよいと思いますか?
そろそろレポートにまとめてくれない?
承知しました。ここまでの内容をまとめて、レポートを作成します。
お時間を割いてお話しいただき、ありがとうございました。ここまでの内容をレポート案としてまとめます。ご確認ください。