💬インタビューレポート
小学生保護者
小学校に通う子どもを持つ保護者。学校から1人1台タブレットが貸与され、宿題や長期休みの課題・調べもの等で子どものタブレット学習を見守っている。
💬主な意見
紙↔デジタル切替が学習のノイズになる
“学習がデジタルでテストが紙など媒体が混在すると、内容以外のノイズに。こだわりの強い子ほど切替が難しく、国語のように形式に慣れる学習で影響が出そう。
説明できる使い分けと、改善の速さを活かして
“なぜ今タブレット/紙なのか子どもに理屈で説明できる運用が安心。授業設計は試行錯誤が必要なので、デジタルのアップデート容易性を活かし都度改善してほしい。
🎤すべての会話ログ
本日は「学校においてデジタルを含む教科書を使えるようにする法律案」について、感じていることやご経験を伺います。差し支えない範囲で、率直にお話しください。 この「デジタルを含む教科書を正式な教科書として認める」法案は、あなたの生活や立場とどのように関わっていますか?
子どもが学校に通っている(保護者)
保護者として関わっているのですね。お子さんの学校では、授業でデジタル教科書(タブレット等で見る教材)を使う場面はありますか?
学校から生徒一人一人にタブレットが貸し出されています。 去年度一年生の子どもから「授業中に使った」という話しは聞きませんでしたが、宿題や長期休みの課題などでは学習や調べものに使用しました。
なるほど、授業中はあまり使わず、宿題や調べものでは使っていたのですね。 その宿題や長期休みの課題でタブレットを使ったとき、お子さんの様子で「学びやすそうだな」と感じた点はありましたか?
パソコンの操作に慣れず苦戦したり、手書き入力の字になかなか丸をもらえなかったりしていてちょっとかわいそうな点が目立ちました。 プログラミング遊びのアプリが入っており、遊び感覚で触って抵抗無く出来ることを色々と試していたのは良いと感じました。
操作に慣れない中で評価(丸)がつきにくいのは、見ていて心配になりますよね。一方で、遊び感覚で触れて抵抗が下がっていく面もあったのですね。 手書き入力で「なかなか丸をもらえなかった」のは、どんな理由(例:字の形が認識されない、書くスペースが小さい、先生側で確認しづらい等)で起きていそうでしたか?
国語の漢字の書き取りの問題で、タブレットにタッチペンで入力するのですが、保護者から見て間違いのない字(書き順や字の形がきちんとしていて、どこを直せば良いか子どもに説明できない)でも正解にならず、何回も解答を繰り返しました。 ここを直せば良いというアドバイスも返ってこないので、見えない合格ラインを探すのは少し理不尽を感じました。 性質上、とめはねはらいの練習にならない点も、宿題としての意味をあまり感じませんでした。
それは理不尽に感じられますね…。保護者から見ても間違いがなく、直しどころのフィードバックもない中でやり直しが続くと、子ども側の自信にも響きやすいと思います。 その漢字の書き取りがタブレット宿題だったことで、お子さんの気持ちや取り組み方に変化はありましたか?
そのタブレット学習は「やりたければやって良い」程度のものだったことが後で分かったようで(子どもが先生の話をよく聞いていなかった)、先生の話はきちんと聞いてこないと損をするという面でも学びになったかな?笑 嫌々ながら取り組んではいましたが、タブレット学習に対して特段に嫌な印象は持っていない様子でした(こういうものなんだな、という受け止め)。
「任意だった」と後から分かったのは、ちょっと拍子抜けしつつも、確かに“先生の話を聞く大切さ”の学びにもなったのですね。タブレット自体への強い嫌悪感が残らなかったのは安心材料にも感じます。 この法案では、デジタルを含むものも検定や無償配布の対象になる「正式な教科書」として位置づけていく方向です。そうなると、今のような“任意のタブレット教材”より、授業や宿題で使う場面が増える可能性もあります。 その前提で伺いたいのですが、デジタル教科書が授業や宿題で今より使われるようになったとき、保護者としていちばん気になる懸念や課題は何ですか?
学習面(理解・集中・記憶など)
学習面がいちばん気になるのですね。 デジタル教科書が増えた場合に、理解・集中・記憶の中でも「特に心配になりそう」なのはどのあたりですか?
書く力が落ちそうというのは世代的には感じますが、必要な力は移り変わっていくんだろうなとも思います。 学習はデジタル教科書で、テストは紙で、などの差があるとややこしさ(学習内容以外の余計なノイズ)につながるのではと心配しています。
書く力の変化は気になりつつ、環境に合わせて必要な力も変わっていくという見方もお持ちなのですね。一方で「学習はデジタル、テストは紙」のような不一致が、学習内容以外のノイズになる懸念、とても具体的だと思います。 その“ややこしさ”が特に出そうだと感じるのは、どんなタイプの問題や教科の場面ですか?
こだわりの強い特性の子は問題の種類や教科に関わらず、タブレットで学習したり鉛筆を使って手書きで学習したりという変化にその都度ついていくことが難しいように思います。 特に国語の学習(読み取り問題など、出題と答え方のパターンを少しずつ覚えて少しずつ慣れていく)では強く出そうな印象があります。 そこの差が学習の定着に響く(影響の大きい子から小さい子までグラデーションで存在する)かもしれない点は、教育者に前提として持っていて欲しいです。
こだわりの強い特性のある子にとって「媒体が切り替わること自体」が負荷になり得る、というご指摘ですね。国語のように“出題形式や答え方に慣れていく”タイプの学習だと、その影響が出やすそうという感覚もよく分かります。さらに、その影響は当事者だけでなく程度の差として広く起こり得る、という点も重要だと思います。 その前提で伺いたいのですが、学校側がデジタル教科書を進める場合、媒体の切り替えによる負荷を減らすために「こういう運用なら安心できる」と感じるものはありますか?
こういう場合はデジタル教科書が良い、こういう場合は従来の学習方法が良い、という場合分け・理由付けがかっちりと決まっている(子どもに理論的に説明できる)ことが負荷を減らすために重要だと思います。 「何で今はタブレットでやるの?」「何で今は紙に書くの?」という疑問が解消されないままで、「とにかくそう決まっているから(デジタル教科書での学習を取り入れなければいけないから)」で進めてしまうことのない運用なら一定安心できそうです。
運用の理由が子どもに説明できる形で整理されていることが大事、ということですね。「とにかく決まっているから」で進むと負荷になりやすい、という感覚もすごく納得感があります。 その「場合分け・理由付け」が学校から示されるとしたら、どんな形(例:授業での説明、プリント、学級だより等)だと保護者としていちばん伝わると思いますか?
「先生から直接に説明を受ける」ということは子どもにとって重要だと実感しています。 親から説明しても納得できなかったことが、学校で先生に言われた場合にはすんなりと受け入れられることが多々あります。 「親も言っていたけど、先生にも言われた(家庭と学校との連携)」というプロセスがあると一番伝わると思います。
先生から子どもへ直接説明があること、さらに家庭とも同じメッセージで連携していることが、納得感につながりやすいのですね。 では次に、学校現場でデジタル教科書を「正式な教科書」として扱うようになったとき、運用面でハードルになりそうなのは何だと思いますか?
授業設計の難しさ
授業設計の難しさがハードルになりそうなのですね。 その「授業設計が難しい」と感じるのは、どんな点でそう思われますか?
現在の教科書の内容をデジタルに落とし込むだけ、というわけにはいかないので、デジタル学習ならではの工夫は、運用の初期段階では失敗と成功を繰り返すことが必要かと思います。 その時「これはちょっと失敗でした」という部分をつつかれてデジタル教科書はダメとまとめられてしまう懸念が、授業設計の難しさにあると感じます。
初期は試行錯誤が必要で、そこでの小さな失敗が「デジタルはダメ」と短絡されてしまう懸念、ということですね。現場の改善サイクルが回る前に評価が固まってしまうのは怖いところだと思います。 その試行錯誤を続けやすくするために、学校や教育委員会の運用として「これがあると失敗を学びに変えられそう」と感じる仕組みはありますか?
紙の教科書とデジタル教科書の大きな違いとして、「アップデートが容易」という点があります。 「教科書の中身や取り組み方が年度中に変わるなんて良くない」という意見も出そうですが、ダメなところが見つかれば早期に全国的に対応できるという利点は活かして欲しいです。
アップデートの容易さを、改善のスピードとして活かしてほしいということですね。年度中に変わることへの抵抗感はあり得る一方で、問題が見つかったときに早く全国で直せるのはデジタルの強み、という視点はとても重要だと思います。 その「早期に全国的に対応できる」利点を活かすとしたら、保護者としては、どんな内容がアップデートされるのが望ましいですか?
将来的な理想としては、子ども一人一人の理解度や習熟度に合わせて教科書の内容が変わっていけば良いなと思います。 現状、紙の教科書では「ここに課題点があったから来年度から変更する」としていたことを、デジタル教科書では都度対応していって欲しいです。
個別の理解度に合わせた内容の出し分け、そして課題が見つかったら年度を待たずに都度改善していく――デジタルの良さをそういう方向で活かしてほしい、ということですね。 ここで一点だけ伺いたいのですが、デジタル教科書が「都度アップデート」される場合、保護者として事前に知らされていると安心できるのはどの程度だと感じますか?
必要であるから行なうことと思うし、授業に対応するスピードも求められるので、個人的には「変更がありました」という事後の報告でも良いと感じます。
事後報告でもよい、というスタンスなのですね。スピード感を優先したいというお気持ちも伝わりました。 次に伺いたいのですが、デジタル教科書について、どの程度ご存知ですか?
名前は聞いたことがある程度
ありがとうございます。いまお話を伺う限り、お子さんの学校では「教科書そのもののデジタル版(正式な教科書)」というより、タブレットを使った学習アプリや課題提出などが中心だったのかもしれません。 そこで伺いたいのですが、「紙とデジタルを比べたとき、学びやすさはどう変わる」と感じますか?
デジタルの方が学びやすい
デジタルの方が学びやすいと感じていらっしゃるのですね。 その「学びやすい」は、どんな学習場面(例:新しい単元の理解、復習、宿題、調べ学習など)で特にそう感じますか?
学生時代は教科書とノートでアナログに学習していましたが、大人になってデジタルに物事を処理するようになって、「これが子どものころからあれば良かったのに」とほとんど全ての場面で思います。 ただ、読書においては、紙とデジタルでは体験の感覚に大きな差(紙の媒体を読む利点)があることを実感しています。
大人になってからデジタルの便利さを実感されて、「子どもの頃からあれば」と感じる場面が多い一方で、読書体験では紙の良さもはっきりあるのですね。 最後に、制度設計をする人(国や教育委員会など)に、デジタル教科書を正式な教科書として進めるにあたって「これは押さえてほしい」と伝えたいことがあるとしたら、どんなことですか?
デジタルとアナログが混在することで生じる余計な負荷が子どもにかからないよう、説明できる場合分け・理由付けをしっかり押さえて設計して欲しいです。
ありがとうございます。ここまでのお話を整理すると、 - タブレット学習では、漢字の手書き認識のように「正解にならないのに理由が分からない」体験が起きると、子どもに理不尽さや無用な負荷が生まれやすい - こだわりの強い特性のある子を中心に、「紙↔デジタル」の切り替え自体がノイズになり、特に国語のように形式に慣れていく学習で影響が出うる - だからこそ、学校・家庭の双方で子どもに説明できる形で、「この場面はデジタル/この場面は紙」という場合分けと理由付けを制度として押さえるべき - 一方でデジタルの強みとして、課題が見つかったら年度を待たずにアップデートできる点は活かしてほしい(保護者としては事後報告でもよい) - 学びやすさ自体は全体としてデジタルに期待しつつ、読書体験では紙の良さも感じている というご意見だったと理解しました。合っていますでしょうか? この内容をもとに、これまでのインタビューをまとめてレポートを作成します。
お時間を割いて詳しくお話しいただき、ありがとうございました。以下、伺った内容をレポート案として要約しました。ご認識とズレがないかご確認ください。