💬インタビューレポート
大学教員
大学教員として、ほぼ全ての授業でデジタル教材を活用しており、学習者が検索や資料の取捨選択を通じて能動的に学ぶ様子を日常的に見ている。
💬主な意見
🎤すべての会話ログ
本日は「デジタル教科書を正式な教科書として認めるための法案」について、率直なお考えやご経験を伺えればと思います。差し支えない範囲で大丈夫です。 この法案は、あなたの生活や立場とどのように関わっていますか?
教育関係の仕事/経験がある
教育関係のご経験があるのですね。現場感のあるお話が聞けそうで心強いです。 差し支えなければ、その「教育関係の仕事/経験」は、どんな立場(例:教員、支援員、教材側、自治体側など)に近いですか?
大学教員
大学教員でいらっしゃるのですね。ありがとうございます。 大学の授業の中で、デジタル教材(電子書籍、LMS上の教材、PDF配布など)を使う頻度はどのくらいですか?
ほぼ全ての授業
ほぼ全ての授業で使われているのですね。かなりデジタル前提の運用をされている印象です。 その中で、紙の教材よりデジタル教材のほうが「学びが進む」と感じるのは、どういった学習行動(例:読む、探す、復習する等)の場面ですか?
学生が自分が学びたいポイントを自分で選択して深く学習できる
学生さんが自分でポイントを選んで深く学べる、という手応えがあるのですね。 その「自分が学びたいポイントを選択して深く学習できる」は、デジタル教材のどんな機能や仕組み(例:検索、リンク、動画、注釈共有など)が効いている感覚ですか?
検索や、多量の資料から選択した部分を手元にダウンロードする機能など
検索や、必要な部分を手元に落とせる機能が効いているのですね。 この法案で想定されている「教科書(小中高の教科書)」がデジタルで正式化された場合も、いま挙げていただいたような“検索して、必要部分を取り出して手元化する”使い方は、学びにどの程度プラスになると思いますか?
使い方を充分指導した上で、自ら能動的に学ぶ力が多いに向上する。 また、紙の教科書の場合には全体を持ち運ぶことになることが教科書を身近に置く習慣のスラッジとなるが、これを避けることが出来る
能動的に学ぶ力が伸びそう、という期待が大きいのですね。加えて、持ち運びの負担が減ることで「教科書を身近に置く習慣」を邪魔しているスラッジを減らせる、という見立ても納得感があります。 その「使い方を充分指導した上で」という点について伺いたいのですが、どんな内容の指導が特に重要になりそうですか?
高齢者にスマホを活用してもらう場合と同様に、「真似び」から始めて、有用性を実感させる
「真似び」から入って有用性を実感してもらう、というアプローチなのですね。 小中学生にデジタル教科書を導入する場面で、その「真似び」は具体的にどんな活動(やらせ方)から始めるのが良さそうですか?
操作のベストあるいはベタープラクティスを準備し、インストラクターの操作をなぞりながら操作させる
ベスト/ベタープラクティスを用意して、インストラクターの操作をなぞりながら身につけさせる、という導入が良さそうなのですね。現場で再現しやすい形になりそうです。 そうした導入を学校で回すときに、運用面でハードルになりそうなのは何だと思いますか?
生徒や学生が使いこなせるまでは教員やアシスタントの負担が増えるが、それ以降は従来と同様の授業をしても、学習者の能動性が高まるので、追加負担がなく学習効率が高くなる。 またその場合、紙教材をあえて選んだ学習者も、これまでと比較して不利になる要素は無いと考えられる
使いこなせるまでの移行期に教員・アシスタントの負担が増える一方、軌道に乗れば学習者の能動性が上がって効率が良くなる、という見立てなのですね。紙を選ぶ学習者が不利にならない、という点も重要な観点だと感じました。 その「使いこなせるまで」の期間は、現実的にはどのくらい(例:数回の授業、数週間、学期単位など)を想定されていますか?
前向きな学習者には数回の授業で充分。リマインドや新たな参入者を増やすために、学期毎にスタートアップイベントを短時間行うと尚良い
数回の授業で立ち上がる層がいる一方で、学期ごとに短時間のスタートアップイベントでリマインドと新規参入を促す、という設計が現実的なのですね。 この法案で「デジタルを含む教科書」が正式な教科書になることについて、いまの時点でデジタル教科書をどの程度ご存知ですか?
自分では良く使っており、使いこなしている学習者も多く知っている。 ただし、自分や周囲に使った経験が無ければ、将来の有用性を予測して導入を推進しようという意見にはなかなかならないと思います
ご自身でもよく使われ、使いこなしている学習者も多く見ている一方で、未経験だと有用性を想像しにくく、導入推進の意見にはなりにくい—そのギャップ感は大きいですね。 では、紙とデジタルを比べたとき、学びやすさはどう変わると思いますか?
場面によって使い分けが良い
場面によって使い分けが良い、という感覚なのですね。 その「使い分け」が特に効果的だと思うのは、どういう学習場面ですか?
現時点では、視認性や書き込みが紙の方がデジタルデバイスより優れている面もある。 俯瞰性や進捗の把握も紙の方が優れているように感じるが、デジタル教科書ネイティブの学習者はそうではなくなるかもしれない
視認性や書き込み、俯瞰性・進捗把握は現時点だと紙に分がある一方で、デジタル教科書ネイティブの世代では感覚が変わるかもしれない、という見立てなのですね。 その中でも「俯瞰性や進捗の把握が紙の方が優れている」と感じるのは、具体的にはどんな作業をしているときですか?
直近の学習内容にとらわれず、幅広く予習や復習を行う場合
直近だけに引っ張られず、広めに予習・復習するときに、紙のほうが俯瞰しやすい感覚があるのですね。 その「幅広く予習や復習」をしているとき、紙だとやりやすい“俯瞰のしかた”は、どんなやり方(例えばページを行き来する、付箋を使う、複数冊を並べる等)に近いですか?
ページの行き来が最大
ページの行き来が大きいのですね。たしかに紙だと前後をパッと往復できますよね。 デジタル教科書が正式化される前提で、紙の「ページの行き来」の良さに近づけるなら、デジタル側にはどんな操作や表示があると良いと思いますか?
全体に対して現在位置やしおりを示すバーの常時あるいは随時表示
現在位置やしおりを示すバーを(常時/随時)表示できると、紙の「行き来」に近づくということですね。とても具体的で、仕様に落とし込める示唆だと感じます。 ここまでの話を踏まえて伺います。デジタル教科書を使うことについて、いちばん気になる懸念や課題は何ですか?
従来の教授方法を変えたく無い教員の強硬な反対
従来の教授方法を変えたくない教員の反対が大きな課題になりそう、ということですね。現場の合意形成の難しさを強く感じていらっしゃるのだと思いました。 その「強硬な反対」は、どんな場面(例:校内の意思決定、研修の場、日々の授業準備など)で表面化しやすい印象ですか?
学内の意思決定において、必要以上に公平性、健康への安全性、効果が未知であることを主張し反対する。また、導入がクラスや生徒毎の任意になったとき、導入推進をボイコットする
意思決定の場で「公平性・健康面・効果が未知」といった論点が強く出て、さらに任意導入になったときに推進がボイコットされ得る、という懸念なのですね。現場で進めようとする側にとってはかなり消耗する状況だと思います。 最後に、この法案の制度設計をする人に何か一つ伝えることがあるとしたら、それは何ですか?
「誰一人取り残さない」という綺麗事を排し、未来を担う大多数のために、効果や効率の高い制度を合理的な根拠に基づいて構築してください。
ご意見ありがとうございます。「綺麗事ではなく、合理的根拠に基づいて、効果・効率の高い制度を大多数の学習者のために」という強いメッセージだと受け取りました。 今のお話でいう「合理的な根拠」として、制度設計側が特に重視すべきだと思う指標は何ですか?
私はこの方面の専門家ではないので、具体的な指標は示せませんが、教育工学や心理学・行動経済学の教育への応用などで、学問的に有用性が認められている指標を用いてください。 あえて具体性に欠ける言葉で示せば、「多様性の幅が広く、変化の速度が早い時代を生きる力を、いかに伸ばしたか」に相当するものが指標になるべきだと考えます。
専門家でない前提をきちんと置いた上で、教育工学・心理学・行動経済学など、実証に耐える領域の知見を使ってほしい、ということですね。また「変化の速い時代を生きる力」を伸ばせたか、に相当する指標が重要だというお考えも理解しました。 ここまで伺った内容をレポートにまとめるにあたり確認させてください。デジタル教科書の正式化によって伸ばしたい「生きる力」に近いものとして、具体的にはどんな能力や行動(例:情報探索、自己調整学習、批判的思考など)を想定されていますか?
あまり論点を拡散しないように絞って挙げると、「生涯にわたる自己学習能力」です。
「生涯にわたる自己学習能力」に絞って重視されているのですね。論点が明確で、とても整理しやすいです。 それでは、これまで伺った内容をまとめ、レポートを作成します。
お時間を割いて率直にお話しくださり、ありがとうございました。伺った内容をもとにレポート案をまとめました。内容に誤りや、ニュアンスの違いがないかご確認ください。