💬インタビューレポート
教育委員会
教育委員会・自治体の立場で、教科書代替教材としてのデジタル教科書の導入初期から、機能開発と学校現場への導入に関わってきた実務経験者
💬主な意見
認知特性で紙とデジタルを使い分けたい
“認知特性上、紙の教科書を読むのが困難な子ども達もいれば、デジタル教科書を読むのがストレスになる子どもたちもいる。特性や発達段階に応じて使い分けが理想。
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本日は「学校においてデジタルを含む教科書を使えるようにする法律案」について、感じていることや経験をうかがいます。答えに正解はありませんので、話しやすい範囲で大丈夫です。 この「デジタルを含む教科書を正式な教科書として認める」法案は、あなたの生活や立場とどのように関わっていますか?
教育関係の仕事/経験がある
教育関係のご経験があるのですね。関わり方によって見え方がかなり変わりそうで、ぜひ詳しく伺いたいです。 その「教育関係の仕事/経験」は、どんな立場でのご経験に近いですか?
教育委員会・自治体
教育委員会・自治体の立場で関わっておられるのですね。制度の運用や調達・採択にもつながる話だと思うので、とても参考になります。 デジタル教科書について、どの程度ご存知ですか?
よく知っている/使ったことがある
実際に使ったことがあるほど詳しいのですね。現場感のあるお話が聞けそうです。 デジタル教科書を「使った」ときは、どんな場面で使いましたか?
現在使用されている教科書代替教材としてのデジタル教科書の導入のときから、様々な機能を開発し学校現場で導入してきた
導入の初期から、機能開発と現場導入の両方に関わってこられたのですね。かなり実務に近い視点をお持ちだと感じます。 その中で、今回の法案のポイントでもある「デジタルも正式な教科書として位置づける(検定や無償給与の枠に入ってくる)」ことについて、自治体側の実務としていちばん影響が大きいと感じる点はどこですか?
デジタル教科書が正式な教科書として位置付けられることで、デジタル教科書の利活用の動機が高まり、デジタル教科書を前提とした授業研究やデジタル教科書の機能開発がやりやすくなる
利活用の動機が上がって、授業研究や機能開発の土台が整う、という期待が大きいのですね。 その「動機が高まる」と感じるのは、自治体や学校の中で具体的にどんな人たちの行動が変わりそうだからですか?
教科書採択に関わる人(都道府県教育委員会・市町村教育委員会・国私立校の校長など)の多くは大きな関心を持ってこの法案を注視しており、2030年の導入が決まれば、すぐにでも調査・運用制度確立・開発が行えるように準備している自治体もある。彼らにgoサインを出す意味でもこの法案成立の持つ意味大きい
採択に関わる意思決定層が「2030導入」が見えた瞬間に一気に準備を進められる、という温度感なのですね。自治体にとって“Goサイン”になるというのはすごく腑に落ちます。 その「準備」として、成立後にまず動き出しやすいのはどんな種類の取り組みだと思いますか?
教育委員会によって状況が全く異なるが、先進的な自治体はデジタルと紙の使い分けの具体的な運用実験に取り組む予定であると把握している。 次の論点にいこう。
承知しました。では視点を変えて伺います。 紙とデジタルを比べたとき、学びやすさはどう変わると思いますか?
場面によって使い分けが良い
使い分けが良い、という感覚なのですね。 その「使い分け」が特に効くと感じるのは、どんな学習場面ですか?
場面というより各生徒の認知特性に合わせて使い分けるべき
各生徒の認知特性に合わせて、というのはとても重要な視点ですね。 その「認知特性に合わせた使い分け」が必要だと感じたのは、どんなタイプの学びにくさ(つまずき)を見た経験がきっかけですか?
特定のフォントだと読めない子や、読み方がわからないから恥ずかしくなって読むのをやめてしまう子、紙だと文字が上手く書けない子がいたり、逆にデジタルだとデジタル画面特有のチラつきや触覚の違いに集中が阻害されてしまう子がいたりするので使い分けは重要
具体例がとても分かりやすいです。読むこと・書くことのつまずきがある子にとっては、フォント変更や読み上げ、入力支援などが助けになる一方で、画面のちらつきや触覚の違いが負担になる子もいる、という両面があるのですね。 その「デジタルだと集中が阻害されてしまう子」について、どんな状況のときに起きやすいと見立てていますか?
紙と違って画面のチラつき&映り込み、光度調整の失敗などは起こりえるし、ページ読み込みの遅れなどは致命的に集中を阻害する。 機器本体の重さ、質感も違うので、紙と同じように扱おうとして失敗するストレスもあるだろう
挙げていただいた要因がどれも「授業の流れが一度切れる」タイプの負担になりそう、というのが伝わってきます。 デジタル教科書を使うことについて、いちばん気になる懸念や課題は何ですか?
デジタル教科書を使うことの懸念・課題とデジタル機器を使うことの懸念・課題がごちゃ混ぜになっているので切り分けて考えるべきだ。 その上で「デジタル教科書を使うこと」への懸念・課題は、各生徒の認知特性を現場の教員がどう把握し使い分けが出来るのかという1点に尽きる。
ごちゃ混ぜになりがちだから切り分けるべき、という整理はとても大事ですね。その上で、核心は「教員が生徒の認知特性を把握して、適切に使い分けできるか」にある、ということですね。 その“認知特性を把握する”について、学校現場ではどんな方法なら現実的に回せそうだとお考えですか?
まず前提として2026年現在、学校現場で認知特性を把握してそれに合わせて授業するというのは個々人の教員のスキルに依存しており、全ての現場でそれを実践することは不可能である。出来る教員がやり易くなる以上の効果を期待するのは厳しいと思う。認知特性を把握する方法を導入する前に教員の人手不足、能力不足問題を解決するべきだ。 ただし、今回の法案を契機として、やれることをやっていくべきだ。 まず文部科学省が認知特性に合わせたデジタル教科書の使い方について専門家の知見を集め整理したものを報告する必要がある。認知科学や発達神経心理学の専門家の知見はデジタル教科書についての作業部会にはほとんど反映されていない。デジタル教科書の運用方法については文科省がこれから検討して方針を示すようだが、その過程に認知科学の知見が反映されないままだと有益な報告にはならないだろう。 次に教科書採択の主体である各教育委員会や学校長らは、採択する教科書の指導指針を出す際に認知特性に応じたデジタル教科書の使い方について盛り込むべきだ。出来ればオープンにして保護者も見れるようにしておくのが望ましい。 最後に、民間事業者も含めて認知特性に応じた指導方法についてのベストプラクティスを集めるべきだ。教科書に付随する動画教材なども含めてこの1年だけでも多くの実践が行われているが、それらは散在しており、研究も少ない。チームみらいがプラットフォームを作り情報を集約するとかでもいいかもしれない。
現場の実態として「認知特性に合わせた授業」は個々の教員スキルに依存していて、制度だけ整えても一気に広がるわけではない、という見立てですね。そのうえで、文科省の専門知見の整理、採択主体による指針化、ベストプラクティス集約まで具体策が出ているのが印象的です。 では次の論点に移ります。 学校現場でデジタル教科書を正式に扱うようになったとき、運用面でハードルになりそうなのは何だと思いますか?
学校のルール作り
学校のルール作りがハードル、ということですね。 その「ルール作り」で、まず最初に決めておかないと混乱が起きやすい論点は何だと思いますか?
どんなルールを作るかではなく、そもそもルールを作るプロセスが重要だという意見
おっしゃる通りで、内容以上に「どう合意して運用に落とすか」で実効性が変わりますよね。 そのルール作りのプロセスに、最低限どんな立場の人が入っていることが重要だと思いますか?
指導する先生たちと生徒たち
先生と生徒がプロセスに入ることが重要、ということですね。実際に使う当事者同士で合意形成していくのが肝だと。 最後に、制度設計をする人に向けて伺います。 デジタル教科書に関して、制度設計をする人に何か一つ伝えることがあるとしたらそれは何ですか?
先にも述べたとおり認知特性に応じた使い方・運用をきちんと制度化できるように、専門知・実践知を集めた上で現場に丸投げせずに焦らずにやってもらいたい。 中長期的な効果検証も並行して行える仕組みも同様に。
ありがとうございます。認知特性に応じた使い方を「専門知+実践知」で組み立て、現場任せにせず、焦らず制度化してほしい、さらに中長期の効果検証の仕組みも並行して整えるべき、という提言だと受け取りました。 ここまでの内容をまとめ、レポートを作成します。
お時間を割いて詳しく共有いただき、ありがとうございました。以下、内容の要約レポート案です。事実関係やニュアンスにズレがないかご確認ください。
主な意見の2の見出しはいいけど、本文は「認知特性上、紙の教科書を読むのが困難な子ども達もいれば、デジタル教科書を読むのがストレスになる子どもたちもいる。特性や発達段階に応じて使い分けが理想。」に変えてほしい
ご確認ありがとうございます。ご指摘のとおり、主な意見2の本文を指定の文面に修正したレポート案を反映しました。