💬インタビューレポート
AI開発者
AI開発・データ分析の業務や研究に関わる立場。法案の詳細は現時点ではほとんど知らないが、顔データの特定性や悪用可能性、越境利用の実効性、課徴金設計が事業スケールに与える影響を懸念している。
💬主な意見
🎤すべての会話ログ
本日は「個人情報の使い方にルールを追加し、悪質な違反には課徴金を科せるようにする法案」について、感じていることや懸念点を丁寧に伺いたいと思います。差し支えない範囲で結構ですので、まずお立場を教えてください。 この法案にどういう立場で関わっていますか。
AI開発・データ分析の仕事や研究に関わっている
ありがとうございます。AI開発・データ分析の立場から関わっていらっしゃるのですね。 今回の個人情報保護法の改正について、現時点でどの程度ご存知ですか。
ほとんど知らない
承知しました。前提をそろえるために、ポイントだけ簡単にまとめると、①AI開発や統計目的なら一定条件のもとで本人同意なしにデータ提供が可能になる、②16歳未満は保護者同意や利用停止請求の仕組みを新設、③顔データは利用目的の公表や利用停止請求を可能に、④悪質で大規模(被害者1,000人超など)の違反には課徴金、という改正です。 この法改正について、全体としてどのように評価していますか。
どちらともいえない
ありがとうございます。「どちらともいえない」と感じていらっしゃるのですね。 現時点で、評価が決めきれない要因になっている点はどのあたりですか。
1.LLMと異なり、顔データは個人を特定が可能で、ベクトルデータがコピー可能。 誰にもバレず証拠を特定できない様に、認証されうる。 法的な観点を、より深める必要がある。 2.被害者の数で違反を決める部分。リスクを恐れ、事業がスケールしなくなる。
ご懸念が2つあるのですね。特に顔データは「特定性が高い」「ベクトルが複製できる」「気づかれにくい形で認証に転用されうる」という点で、法的な整理がもっと必要だという問題意識、と理解しました。 その「誰にもバレずに認証されうる」と感じるのは、どんな利用場面を想像されていますか。
スマホカメラや監視カメラで、本人を特定や追跡が可能
なるほど、スマホカメラや監視カメラを起点に、本人の知らないところで特定・追跡につながる場面を想像されているのですね。 その場合、あなたが特に問題だと感じるのは「顔データを集めること」そのものですか、それとも「集めた顔データを別目的(追跡など)に使えること」のほうですか。
顔データはAI開発には必要。顔データの取り扱いに関して、法的な観点とシステム的な観点両方で、深める必要がある
おっしゃる通りで、「AI開発には必要性がある」一方で、取り扱いのルールや技術的な担保が弱いと転用リスクが残る、というバランスの問題意識ですね。 ここで伺いたいのですが、顔データのルールについて、法案の方向性(利用目的の公表+本人が理由を問わず利用停止を求められる)に“追加するとしたら”どんな仕組みが必要だと感じますか。
現時点で答えはない。外国の動向を注視し、どんな対策が可能か検討して、アップデート前提の法案にする。
ありがとうございます。「現時点で確答は難しく、海外動向を見ながらアップデート前提で設計すべき」というスタンスなのですね。 その“アップデート前提の法案”にする場合、どのくらいの頻度で見直せる形だと現実的だと感じますか。
頻度は、AIの進捗と社会や政治家の理解次第。明確な頻度は不透明。
なるほど、技術の進展スピードと、社会・政治の理解の追いつき方次第で、固定の頻度は決めにくいということですね。 では、頻度を固定しない代わりに、「どういう状況になったら見直しを発動するか」という“トリガー条件”を置くとしたら、どんな条件があるとよいと思いますか。
トリガー条件はなし。随時見直す。
了解しました。「トリガーを決めて待つのではなく、随時見直す」運用が現実的、というお考えなのですね。 その“随時見直す”を制度として担保するなら、見直しを主導するのはどの主体(例:個人情報保護委員会、国会、業界団体+第三者委員会など)がよいと感じますか。
主導する判断ができる組織はない。常に動向をチェックし、AIの理解が高くどれくらいの影響や危険か判断できたら、どこでもいい。
ありがとうございます。「今は主導できる組織が定まらないが、AIを理解して影響・危険度を判断できるなら主体はどこでもよい」という感覚なのですね。 その“AIの理解が高く、影響や危険を判断できる”主体だと信頼できる条件は、どんな要素だと思いますか。
AIを理解し、解像度が高い。
承知しました。「AIを理解していて、解像度が高いこと」が信頼の条件なのですね。 その“解像度が高い”というのは、具体的にどんな能力や知識を指していますか。
AIがどの様な仕組みで、動いているのかを把握している。普段からAIを使いどの様な活用がされるのか、どの様な悪用ができるのかを判断できる状態。
ありがとうございます。仕組みの理解だけでなく、日常的な利用を通じて「活用」と「悪用」の両方を具体的に見立てられることが解像度、ということですね。 その「悪用ができる」と判断されるパターンとして、顔データに関しては具体的にどんな悪用を想定していますか。
勝手に知らないところで使われる。使われても、客観的に証明できない。
なるほど、「本人の知らないところで使われる」うえに、「使われた事実を本人側が客観的に立証しにくい」という非対称性が一番の問題、ということですね。 この“証明できない”問題を減らすために、事業者側に最低限求めるとしたら、どんな記録(ログ)や証跡を残すのがよいと思いますか。
事実上不可能。世界的に同じ問題をかかえてるので、注視する。
ありがとうございます。「ログや証跡で解決しようとしても、実務的には難しい/世界的に同じ課題なので注視」という感覚なのですね。 では確認ですが、今回の法案にある「顔データを扱う事業者は、その事実と利用目的を公表する」「本人は理由を問わず利用停止を求められる」という枠組み自体は、今の時点ではどの程度有効だと感じますか。
国内前提なので、ほぼ無意味。せめて国内のサーバーに、データを保存必須にする。
ご意見ありがとうございます。国内事業者だけに効くルールだと、海外事業者や越境利用が絡むと実効性が弱い、という懸念なのですね。 「国内サーバーにデータ保存を必須にする」案についてですが、どのデータ(例:生の顔画像、顔特徴ベクトル、照合用テンプレート等)まで国内保存の対象にすべきだとお考えですか。
顔画像とベクトルデータ。テンプレートのロジックは、問わない。
ありがとうございます。顔画像とベクトルデータは国内保存の対象にして、テンプレート生成などのロジック自体は問わない、という整理なのですね。 その「国内サーバー保存を必須」にした場合、現実的に一番ハードルが高くなりそうなのはどの部分だと感じますか。
システム開発のアーキテクチャ設計くらいで、利用者にはほぼ影響がない
なるほど、利用者体験への影響は小さく、主に事業者側のアーキテクチャ設計の問題として吸収できる、という見立てなのですね。 では次に、もう一つ挙げてくださっていた論点で伺いたいのですが、「被害者数(1,000人超など)で課徴金の対象が決まる」点について、どんな形でリスクがあると感じていますか。
1000人以内の事業者が増える。適用されない海外製が使いやすくなり、競争力が損なわれる。
なるほど、課徴金の適用基準が「被害者1,000人超」だと、①国内では“1000人以内に抑える”インセンティブが働き得る、②一方で適用されにくい海外サービスが選ばれて国内の競争力が落ちる、という懸念なのですね。 この「1000人以内の事業者が増える」というのは、具体的に事業者がどんな意思決定(例:提供地域を絞る、機能提供を止める、ユーザー数の上限を設ける等)をすると想像されていますか。
許容範囲のリスクで、ビジネスする事業者。
ありがとうございます。「許容範囲のリスクに収まる規模・やり方でビジネスをする事業者が出てくる」というご懸念なのですね。 その場合、事業者が“許容範囲に収める”ために取りそうだと感じる行動は、どんなものですか。
ノーコメント
承知しました。無理に伺いません。 この「被害者1,000人超などの大規模な違反に限って課徴金」という設計について、もし制度を設計する側に伝えるなら、どんな方向に直してほしいと感じますか。
ガバメントクラウドの様な、ルールを設ける。ルールを守らない事業者は、悪質な違反とする。一方で、ルール制度が高いと、海外製が有利になるので、データの取り扱いに、重点を置く。
ありがとうございます。課徴金の“人数しきい値”よりも、まず「守るべきデータ取扱いルール」を明確にして、そこに違反した事業者を悪質と扱えるようにする、という方向性ですね。同時に、ルールが重すぎると海外勢が有利になるので、特にデータの取り扱い(統制ポイント)に重点を置くべき、というお考えだと理解しました。 最後に確認させてください。この法案について、制度を設計する人に一つだけ伝えるとしたら何ですか。
データをどう"保存と活用"するかが重要で、縛りすぎない法律の判断ができる人が、立法してもらうのが嬉しい。
ありがとうございます。「保存と活用の両立」を軸に、縛りすぎず、でも実効性のある線引きをできる人が立法に関わってほしい、というご要望なのですね。 ここまでで一通り重要な論点は伺えたので、これまでの内容をまとめ、レポートを作成します。
お時間をいただき、ありがとうございました。伺った内容をもとにレポート案をまとめました。内容に抜け漏れやニュアンス違いがないか、ご確認ください。