💬インタビューレポート
一般市民
ネットやSNS利用を通じてクッキー等による追跡やデータ収集に不安を感じる一般の立場。医療機関等を含む幅広い場面での収集・利活用、匿名化後の再特定や漏えいも懸念しており、現在は米国で生活し現地で顕在化する政治利用等の問題意識も踏まえて意見を述べている。
💬主な意見
同意なし利活用は誘導・犯罪・民主主義に影響
“同意なく情報が使われると購買が誘導され、売買を通じ犯罪に悪用されうる。政治利用で民主主義が傷つく懸念や、人種・病歴分析による差別も心配。
厳格なセーフガードと強い抑止が必要
“事前審査・定期監査、誰でも使えるオプトアウト、扱ってはいけない情報の定義、技術進歩に応じた見直しが重要。法人と責任者個人に抑止力ある刑罰(課徴金に限らない)や、課徴金の上振れも必要。
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本日は、個人情報保護法を改正し、AI開発向けデータ利活用の促進・こども保護の強化・課徴金制度の新設などを行う法案について、お考えを伺います。率直に、感じていることをそのままお話しください。 この法案にどういう立場で関わっていますか。
自分の個人データがどう使われるか気になる一般の立場
ありがとうございます。一般の立場で「自分の個人データがどう使われるか」が気になる、ということですね。 日常の中で、個人データの扱いについて不安や違和感を感じた出来事はありますか。
あります。普段ネットやSNSを使用する際に、クッキーやその他技術を使って私の興味関心や購買履歴等を私の知らないところで収集利用されているのが不安です。今回の個人情報保護法改正にあたっては、ネット以外でも医療機関等を通じて自分のパーソナルな情報が収集利用されるリスクが指摘されていて不安です。匿名化する処理をしたとしても、ビッグデータとして処理することで、個人が実質的に特定されたり、匿名化処理する事業者が故意・過失によって情報を流出させる可能性があることも心配です。
不安に感じられるお気持ち、よく伝わってきました。特に「知らないところで収集・利用されること」と、「匿名化しても実質的に特定され得る/漏えいし得る」点が気になっていらっしゃるのですね。 その不安は、どんな場面でいちばん強く感じますか。
特定の場面というよりは、いつ、どこで収集されているかが分からず、オプトアウトする選択肢をとることすらできない現状が不安です。
「いつ・どこで収集されているか分からないので、オプトアウト(止める選択)すら取りにくい」ことが不安の中心なのですね。 今回の改正の話に引き寄せて伺いたいのですが、法案の中では「顔特徴データ(顔認証に使う特徴情報)」について、事業者名や利用目的、利用停止請求の手続などを周知する義務が新設されます。こうした“周知を義務づける”方向性は、今の不安の軽減につながりそうですか。
ないよりはましだと思います。ただ形式的に周知されていたとしても、毎回それを認知し、考えて、対応するということは実質的に難しく、形骸化してしまうのではないでしょうか?また利用を拒否した場合に、サービス等が利用できなくなったり、不便になったりすることで、個々人の選択肢が実質的に制限されたり、制度の実効性が担保されなくなることも懸念しています。
おっしゃる通りで、「周知されても読みきれず形骸化しがち」「拒否すると不利益が出て、結局選べない」という懸念ですね。 その“拒否すると不便になって実質的に選べない”状況について、どんな種類の不利益があると特に問題だと感じますか。
例えば当該サービスが使えない、使えたとしても煩雑なway aroundを要求される、またサービス提供者との人間関係が悪くなるなどといった不利益が考えられます。そのようなシーンに出くわした際に、実際に断る選択肢を選べる人がどれだけいるでしょうか?形式ではなく実質で考える必要があると思います。
具体的に「サービスが使えない/迂回が煩雑/関係性が悪くなる」といった不利益があると、現実には拒否しづらくなってしまう、という問題意識ですね。形式だけでなく実質で担保してほしい、という点も重要だと思います。 今回の法改正について、現時点でどの程度ご存知ですか。
概要は知っている
ありがとうございます。では全体感について伺います。 今回の法改正について、全体としてどのように評価していますか。
良くない
承知しました。「全体として良くない」という評価なのですね。 今回の法改正で、あなたが特に気になっている点はどれですか。
一定の条件のもとに、同意なく個人データが使われるようになること
ありがとうございます。「一定の条件のもとに、同意なく個人データが使われるようになること」が特に気になっているのですね。 その点が気になるのは、どのような背景や経験からでしょうか。
日ごろから、情報化社会において、個人の情報が本人の主体的同意がなく利用されることで、購買の選択が誘導されたり、また情報が売買されうることで犯罪等に利用されることが気になります。また、米国の選挙等で実際に問題になっている通り、政治活動に利用されることで、民主主義の基盤が毀損されうることにも重大な懸念をもっています。さらに、人種や病歴等が過度に分析されることで、特定の社会的集団が結果的に差別的な扱いを受けることも懸念しています。私は、現在米国で生活していますが、具体的にそのような問題が顕在化していることから、同様の状況を日本でも生み出さないことが重要と思っています。
お話を聞いて、懸念がとても具体的だと感じました。購買や情報接触の「誘導」、名簿流通などを通じた「犯罪利用」、政治的ターゲティングによる「民主主義への影響」、そして属性分析が進むことで起きる「差別」のリスク—米国で実際に見えている問題として捉えていらっしゃるのですね。 この法案について、制度を設計する人に伝えるとしたら、どういった点を制度の条件として入れてほしいですか。
一定程度、社会における情報の利活用が進むことは重要と考えています。ただし、その際は、非常に厳格なセーフガード措置が伴う必要があります。扱われる情報は非常にセンシティブなものです。利用目的や利用者のガバナンス、問題が発生した際の対応、予防措置など、性悪説に立った形で厳格な制度設計をしてください。
ありがとうございます。利活用自体は否定しない一方で、「性悪説」で運用できるくらい厳格なセーフガード(目的・ガバナンス・予防・事故対応)を求めていらっしゃるのですね。 ここまでのお話を伺っていると、特に“統計作成・AI開発目的なら一定条件で同意なし提供が可能になる”点が、実質的な歯止めになるのか不安の中心にあるように感じました。 そのセーフガードの中でも、制度として最低限ここまでは必須だと思う要件はどんなものですか。
事業者の事前審査制、定期監査の導入、故意・過失で情報流出等を起こした事業者への抑止効果を伴う刑罰の整備、簡易で誰でも使えるオプトアウトの仕組みの整備、最低限扱ってはいけない情報の定義(人種等)、AIの進歩等に応じた適切な制度改善の義務化
ありがとうございます。事前の審査・定期監査・抑止力ある刑罰・使いやすいオプトアウト・扱ってはいけない情報の線引き・技術進歩に合わせた制度改善、という“実効性のある束”が必要だということですね。 ここで一点だけ確認させてください。今回の法案では、新設される課徴金は「悪質な大規模違反(原則1,000人超)で、違反で得た利益相当額」を納付させる仕組みで、安全管理の不備による漏えいそのものは原則として課徴金の対象外です。 この前提を踏まえたとき、漏えい等を減らすという観点では、課徴金制度の対象範囲はどう見えますか。
全く不十分です。流出規模が少なくとも流出した人にとっては重大な人権侵害になります。また利益相当額というのも、特に故意に流出される事業者にとっては、抑止効果が全くなく、極めて問題だと思っています。
ご指摘の通りで、漏えいの被害は規模に関係なく当事者には重大ですし、「利益相当額」だと“やった得”を消す以上の痛みにならず、抑止として弱いという見え方になりますよね。 では確認なのですが、抑止力を上げる方向としては、課徴金を「利益相当額」から上振れできる設計(たとえば売上連動や定額加算など)にするのが望ましいと感じますか。
はい、利益相当額から相当程度上振れさせる必要があると思います。また、処罰対象も法人と責任者個人、双方の責を問う必要があると思います。
ありがとうございます。抑止力という観点では、利益相当額を上回る課徴金設計に加えて、法人だけでなく責任者個人にも実効的な責任を負わせる必要がある、ということですね。 ここまで伺った内容をまとめ、レポートを作成します。
お時間をいただき、ありがとうございました。伺った内容をもとにレポート案をまとめました。ご確認ください。
事前審査・定期監査、法人と責任者個人双方を対象に抑止力ある刑罰、誰でも使えるオプトアウト、扱ってはいけない情報の定義、技術進歩に応じた見直しが重要。課徴金は利益相当額を上振れ。 この修正を提案します。
修正提案ありがとうございます。ご指摘の点(事前審査・定期監査、法人/責任者個人への抑止、簡易オプトアウト、扱ってはいけない情報の定義、技術進歩に応じた見直し、課徴金の上振れ)を反映したレポート案に更新しました。ご確認ください。
主な意見 1. 同意なし利活用は誘導・犯罪・民主主義に影響 本人の主体的同意なしに情報が使われると、購買の誘導、売買を通じた犯罪利用、政治利用で民主主義が傷つく懸念がある。 2. 周知だけでは形骸化し、拒否は不利益で難しい 形式的な周知は読み切れず形骸化しがち。拒否するとサービス不可、迂回が煩雑、関係悪化などの不利益で実質的に選べない。 この部分は、原案のママがいいです。
ご確認ありがとうございます。ご希望どおり、主な意見のうち①②はご提示の「原案のママ」(そのまま)で反映したレポート案に整えました。
3. 厳格なセーフガードと強い抑止が必要 事前審査・定期監査、法人と責任者個人双方を対象に抑止力ある刑罰、誰でも使えるオプトアウト、扱ってはいけない情報の定義、技術進歩に応じた見直しが重要。課徴金は利益相当額を上振れ。 3. はこの内容がいいです。法人と責任者個人を対象に抑止力ある刑罰、これは課徴金に限定されないという点が重要です。
お時間をいただき、ありがとうございました。ご指摘どおり、③は「刑罰(法人・責任者個人の双方)」が課徴金に限定されない点も含めて反映し、最終版として整理しました。ご確認ください。