💬インタビューレポート
行政職員
役所で小児の難病医療制度の認定審査に携わり、申請情報などの個人情報(特に医療・健康に関する機微情報)を業務で扱っている。
💬主な意見
機微情報は再識別対策がないと将来不利益が怖い
“子どもの難病情報は保険加入や団信で不利益につながり得る。マスキングだけでは希少疾患は特定リスクが残り、1000人単位や都道府県単位などの集約が必要。
🎤すべての会話ログ
本日は、「個人情報の使い方にルールを追加し、悪質な違反には課徴金を科せるようにする法案(個人情報保護法改正案)」について、ご意見を伺えればと思います。差し支えない範囲で率直にお話しください。 この法案にどういう立場で関わっていますか。
仕事で個人情報を扱っている(企業の担当者、行政職員など)
ありがとうございます。差し支えない範囲で、普段のお仕事では個人情報をどういう業務で扱っていますか。
小児の難病医療制度の認定審査
ありがとうございます。小児の難病医療制度の認定審査とのことですが、今回の個人情報保護法の改正について、現時点でどの程度ご存知ですか。
概要は知っている
ありがとうございます。では、この法改正について、全体としてどのように評価していますか。
良くない
承知しました。全体として「良くない」と感じられているのですね。 その評価につながった点として、どういったところが特に引っかかっていますか。
個人の統計データとして利用するのであれば、なぜ個人の名前や住所が隠されない形での提供が必要なのかよくわからない
ご懸念のポイント、よく伝わりました。「統計目的なら、名前や住所を隠した形で十分では」という感覚ですよね。 確認なのですが、あなたが特に問題だと感じるのは、この改正で“統計・AI開発目的なら同意なしで第三者に提供できる”こと自体でしょうか。
それ自体は問題ないとは思いますが、第三者が本当に悪意がないのかどうかをどういう風に判定するのかと言うのは甚だ疑問です
おっしゃる通りで、「同意なし提供」を許すなら、受け取る第三者が本当に統計・AI開発の目的に限定して扱うのか、悪用しないのかをどう担保するのかが肝になりますよね。 そこで伺いたいのですが、あなたが特に不安を感じるのは「第三者を誰がどう選ぶ(審査する)ところ」ですか?
そうですね私は役所に勤めていますが、書類上でしか判断できないので、どう選ぶかと言うところは結局形骸化するのではないかと思っています
その感覚、とても現実的だと思います。行政側でも、結局は申請書類や誓約書ベースになりやすくて、実態のチェックが難しいと形骸化しうる、ということですよね。 伺いたいのですが、ここでいう「形骸化しそう」と感じるのは、主にどの段階のことですか。
条件を書類で提出してもらうと思うんですけれども、書類だけ提出すれば形上を整えられるからです
なるほどです。書類さえ揃えば“形式上は通ってしまう”構造だと、実態として目的外利用が起きても入り口では止めにくい、というご懸念ですね。 この点について伺いたいのですが、書類での確認が中心になるとして、どんな種類の書類(たとえば利用目的の記載、データ管理体制、委託先の有無など)だと「形だけになりやすい」と感じますか。
全てです
率直に言うと「何を出してもらっても、出せてしまうものは出せてしまう」という感覚なのですね。 では確認したいのですが、書類審査が形骸化しやすい前提で、制度として現実的に効くのは「事後の監査・立入・罰則」だと思いますか。
現実的に聞くのはそうだと思いますが、事後では遅いと思います
おっしゃる通りで、事後に発覚しても、個人情報は一度広がると取り返しがつかない面があって「遅い」という感覚になりますよね。 そこで伺いたいのですが、「事後では遅い」と感じるのは、どういう被害が起きるイメージを持っているからですか。
特に子供の場合は、本人の生活習慣などによらず、病気になってしまうことがほとんどなので、それによって将来生命保険に入れないであるとか、また住宅ローンの団体信用保険に入れないとようなことが起こるのではないかと思っています
具体的なイメージを教えていただきありがとうございます。小児の難病の情報は、本人の行動と無関係に生じうる分、将来の保険加入や団信などで不利益につながり得る、という不安なのですね。 この法案の制度設計として伺いたいのですが、統計・AI開発目的でのデータ提供を認めるとしても、「この種類の情報だけは第三者提供を原則禁止にしてほしい」と感じるものはありますか。
一般的に機微情報と呼ばれる情報です
ありがとうございます。医療・健康に関する情報などの「機微情報」は、統計・AI開発目的であっても第三者提供を広く認めるのは不安、ということですね。 では確認させてください。制度として「機微情報は原則禁止」にする代わりに例外を作るとしたら、どんな条件なら例外として許容できそうですか。
完全に個人の情報個人名や住所をマスキングした形での情報です。ただ、小児の難病などかなり数が少ないものであると特定される恐れがあるのではないかと思っています。
ありがとうございます。マスキング(氏名・住所などの直接識別子を外す)だけでは、希少疾患のように母数が小さい場合は再識別の恐れが残る、というご懸念ですね。 そこで伺いたいのですが、希少疾患のデータを統計・AI開発に使うことを許容するとして、「この条件なら再識別リスクが下がって現実的に受け入れられる」と感じる要件はどんなものですか。
ある程度数があってこれ以上ってある数字以上あって、個人が特定されないって言うことが条件だと思います。
ありがとうございます。「ある程度の件数があって、個人が特定されない規模であること」が最低条件、ということですね。 その『これ以上なら』という件数の目安は、どのくらいを想定されていますか。
1000人単位。後は、地理的に都道府県単位とかかなり地理的な範囲を広げると言うのも方法だと思います。
具体的な目安をありがとうございます。件数は「1000人単位」、あわせて地理的な粒度も都道府県単位などに広げて特定されにくくする、という発想ですね。 最後に、この法案について制度を設計する人に伝えるとしたら、どんな点を優先して設計してほしいですか。
まず個人を特定されないことを最優先にしてほしいです
ありがとうございます。個人が特定されないことを最優先に、という強いご要望ですね。 これまでのお話をまとめ、レポートを作成します。
お時間をいただき、ありがとうございました。ここまでの内容をレポート案としてまとめました。事実関係やニュアンスが違っていないか、ご確認ください。