💬インタビューレポート
学校関係者
学校現場に近い教育関係者として、デジタル教科書は研修・資料ベースで把握。学びやすさ(音声活用)と健康面・運用負担(端末/通信トラブル)を両面から捉え、自治体・地域による機器支援の仕組みを提案している。
💬主な意見
健康配慮と端末トラブルは地域で支える設計を
“液晶を長時間見る弊害で目・睡眠・脳の疲れが懸念。読むだけでなく聞く設計が重要。端末故障は学校単位の代替機/保守が重く、市区町村で貸出拠点を持つ等が現実的。
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本日は「学校においてデジタルを含む教科書を使えるようにする法律案」について、感じていることや経験を丁寧に伺えればと思います。答えにくいものは飛ばして大丈夫です。 この「デジタルを含む教科書を正式な教科書として認める」法案は、あなたの生活や立場とどのように関わっていますか?
教育関係の仕事/経験がある
教育関係のご経験がおありなのですね。差し支えなければ、そのご経験は、学校現場(教員・支援員など)に近い形でしょうか、それとも行政・教材/ICT関連など学校の外側に近い形でしょうか?
学校現場に近い
学校現場に近い立場なのですね。ありがとうございます。 デジタル教科書について、どの程度ご存知ですか?
ある程度知っている
学校現場で触れてこられて、ある程度ご存知なのですね。 その「ある程度」は、実際の授業でデジタル教科書を使った経験がある状態に近いですか?
研修や資料で知っている程度
研修や資料を通じて把握されている段階なのですね、ありがとうございます。 紙とデジタルを比べたとき、学びやすさはどう変わると思いますか?
場面によって使い分けが良い
使い分けが良い、という感覚なのですね。では、その「デジタルの方が良さそう」と感じるのは、どんな学習場面でしょうか?
「音」と「声」に伴う教育分野。国語・外国語・音楽や、全教科の教科書の読み上げ、また教科書自体の外国語翻訳など。
「音」「声」が関わる場面でデジタルの良さが出る、という見立てなのですね。たとえば国語・外国語・音楽の中で、デジタル教科書の機能(音声、読み上げ等)が入ることで、授業や学習の進み方が具体的にどう変わりそうですか?
授業を復習するにおいて、教科書を読むことに目線が行きがちだが、むしろ音声単独での「聞く」復習が能動的に行えるのは、紙ではない教材での大きな利点になると思う。
音声だけで「聞く」復習が能動的にできる、という利点を見ておられるのですね。 その「音声単独での復習」が特に効果を発揮しそうなのは、どんな子ども(学年や学習状況など)だと感じますか?
全学年。教科書を扱う学生はすべからく対象になる。
全学年で効果があり得る、という見立てなのですね。 では、その音声での復習が広がることで、紙中心のときに起きやすい学習上のつまずきは、どんなものが減りそうだと感じますか?
読解能力に成長の遅れがある学生は、そもそも従来型の読み書きではつまづきが生じやすいように思う。また日本語以外の言語を学ぶ、または外国語圏の学生が日本語の紙の教科書を用いるのも同類のつまづきが生じやすいのではないか。
読解の成長がゆっくりな子や、日本語以外の言語背景のある子にとって、紙中心だとつまずきが出やすい、という見立てなのですね。 デジタル教科書の音声(読み上げ等)が入ることで、そうした子どもたちの「どの学習場面」のつまずきが特に改善しそうだと感じますか?
個々の特性として聴覚能力(感性)に優位な傾向があれば、読解能力とは異なる長所から普遍的な初等教育・中等教育の内容を集団教育においても獲得しやすくなるのではないか。
聴覚の強みを足がかりに、集団授業でも内容を取り込みやすくなる、という期待なのですね。 ここから少し視点を変えて伺います。デジタル教科書を使うことについて、いちばん気になる懸念や課題は何ですか?
健康面(目・姿勢・睡眠など)
健康面がいちばん気になるのですね。 その健康面の懸念は、授業中と家庭学習のどちらで特に起きやすいと感じますか?
両方。
両方で起きうる、という感覚なのですね。 両方の中でも、特に影響が出やすいのは「目」「姿勢」「睡眠」のうち、どれだと感じますか?
目と睡眠、それと過集中による脳の疲れ。
目と睡眠、さらに過集中による脳の疲れが特に気になるのですね。 その「過集中による脳の疲れ」は、授業中に起きやすいと感じますか、それとも家庭での学習中に起きやすいと感じますか?
シチュエーションを問わず、液晶画面を長時間見ることの弊害として。
液晶画面を長時間見ること自体が、場面を問わず負担になり得る、ということですね。 その弊害を抑えるために、学校の運用として「ここまでなら許容できそう」と感じる、1コマの中での画面を見る時間の上限(感覚的な目安)ってありますか?
専門領域は医学的知見に沿うのが良いので、素人的な回答は差し控える。むしろ強調したいのは、「見る」以外の「聞く」で全体的な身体的負担を軽減することも見据えられるのではないかということ。
医学的知見に沿うべきで、安易に時間の上限を言い切らない、という慎重さはとても大事だと感じます。また「見る」だけに寄せず「聞く」を組み合わせて負担を下げる、という発想なのですね。 その「聞く」を前提にした設計に寄せるとしたら、デジタル教科書にどんな機能や仕様が入っていることが重要だと思いますか?
読み上げは教科書的な文体・レイアウトでも満足に行くように出版会社側が調整すること。翻訳機能があること。読み上げに関する環境調整(速度・音声の性別や年齢など)。バックグラウンド再生機能。音質のアップグレード機能。音声データが内部搭載の場合はストレージや外部記録媒体(sdカード)を使用できることや通信ダウンロードでの一時保存機能。
具体的に機能要件まで挙げていただき、現場での使い方がかなりイメージされているのが伝わってきました(読み上げの品質、翻訳、再生環境の調整、バックグラウンド再生、音質、保存方法など)。 学校現場でデジタル教科書を正式に扱うようになったとき、運用面でハードルになりそうなのは何だと思いますか?
端末・通信トラブル対応
端末・通信トラブル対応がハードルになりそうなのですね。 そのトラブルは、現場の運用としては「授業が止まる」タイプのものが特に問題になりそうですか?
授業中もそうであるが、まだ紙の教科書でも代用できるので単発の授業では対応できる範疇だと思う。むしろ端末のトラブルは学校全体の視点としては不定期に発生するもので、代替機などの対応は使用頻度やメンテナンスの面で個々の学校ごとで行うには負担が大きいと思われる。
単発の授業なら紙で代用できる一方で、学校全体として不定期に起きる端末トラブルへの備え(代替機やメンテナンス)が、学校単位だと負担が大きいということですね。 その負担を下げるために、自治体や国の制度設計として「こういう支え方があると現場が回りやすい」と思う形はどんなものですか?
市区町村単位での代替機提供。規格を満たした何らかの代替機の貸し出しを市区町村の期間(役所・図書館など)で展開する。代替機の貸し出し先はもっぱら児童の保護者が想定されるので、貸し出し時の人物確認はマイナンバーや各種市民サービスの登録証など、市区町村がワンストップで確認できる媒体を用いる。
市区町村単位で代替機を用意して、役所や図書館などで貸し出す——学校単位で抱え込まない仕組みが現実的、というご提案ですね。本人確認まで含めて運用が想像できているのが印象的でした。 最後に1点だけ伺います。デジタル教科書に関して、制度設計をする人に何か一つ伝えることがあるとしたらそれは何ですか?
学校機関のみに包括的な対応を求めず、地域(共同体)としての教育協力を立法で定義し、普及すること。
「学校だけに背負わせず、地域(共同体)として支える枠組みを制度として定義して普及させるべき」というメッセージですね。とても重要な観点だと思いました。 その「地域としての教育協力」を、今回のデジタル教科書の文脈で具体化すると、地域側(たとえば自治体施設・図書館・民間・地域人材など)はどんな役割を担うのが現実的だと感じますか?
デジタル教科書の「教育」の部分は専門機関たる学校に委託し、他方で「教育」以外の機器関連については地域側が現実的に担えるので、積極的に地域教育の一環として貢献する意思を持つこと。
学校が担うべき「教育」と、地域が担える「機器・インフラ」を切り分けて、後者は地域が責任を持って支える——その役割分担が現実的、ということですね。 ここまでのお話を踏まえて、レポート作成に移ります。これまでの内容をまとめ、要点と示唆(制度設計への提案)を整理します。
お時間を割いて詳しく共有いただき、ありがとうございました。伺った内容をもとに、レポート案をまとめました。ご確認ください。