💬インタビューレポート
米流通業者
流通・販売事業者の立場。職場で消費者会員から年間の購入予約を取り、産直契約で作付け段階から米取引を行っている実務経験がある。
💬主な意見
予約・産直契約がない一般農家ほど減反に応じやすい
“年間予約と産直契約がある産地は売上見通しが立ち供給も安定するが、一般農家は収益安定策が乏しく、近隣では減反に応じた地区も目立つ。
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本日は、「米の流通実態把握を強化し、民間備蓄制度を創設して安定供給体制を整備する法案」について、ご意見や実感をうかがいたいです。率直に、わかる範囲で大丈夫です。 この法案にどういう立場で関わっていますか?
・流通・販売事業者(集荷/卸/小売/EC・米穀店など)
ありがとうございます。 この法案について、現時点でどの程度ご存じですか?
聞いたことはある
ありがとうございます。念のため短く要点だけ共有すると、この法案は①米の在庫・流通状況の報告対象を、従来より広げて「見える化」すること、②一定規模以上の出荷・販売事業者に一定量の在庫保有を求める「民間備蓄制度」を新設すること、③条文上残っていた「生産調整」を削除して「需要に応じた生産」を明記すること、が柱です。 その上で伺います。今回の法案について、全体としてどのように評価していますか。
どちらかといえば良くない
率直にありがとうございます。「どちらかといえば良くない」と感じられるのは、法案のどの部分が特に引っかかっていますか?
・需要に応じた生産への転換(供給安定・農家の判断)
ありがとうございます。「需要に応じた生産」への転換が気になっているのですね。 この点について、実務の感覚として「需要に応じた生産」が進むと、米の安定供給は良くなりそうですか、それとも不安定になりそうですか?
不安定になると思います。生産者は相互にコメの値崩れを警戒し合い、減産を主要な選択肢だと考えるはずだからです。
不安定になる見立てなのですね。値崩れへの警戒が強いと、結果的に減産に寄りやすい、という感覚はすごく現場っぽいと思いました。 その「減産が主要な選択肢になる」と感じたのは、どんな場面や出来事を見た経験がきっかけですか?
現在私の職場では、消費者である会員から事前に年間の購入予約を受け付け、産直契約を通じて作付けの段階からコメの取引を行っているため、生産者は年間を通じて売り上げ予想が立ちやすく、消費者への安定した供給にもつながっています。しかし、一般の農家の場合はそういった収益安定の手段がありません。ですから、私たちと取引のある産地では減反政策に抵抗したところも少なくない一方で、近隣の一般地区では減反に応じたところも目立つのです。
とても具体的でわかりやすいです。予約・産直契約があると、生産者側の見通しが立って供給も安定する一方、そういう手段がない一般の農家ほど、値崩れ回避として減産に寄りやすい、という対比なのですね。 この法案で「需要に応じた生産」が法律に書かれることで、いまお話に出たような“予約や契約で需要が見えている取引”は、今よりやりやすくなりそうですか?それとも、やりにくくなりそうですか?
産直取引はこれまでと変わらないと思います。但し、減産基調によってコメの値上がりが見られれば、産直取引の場合もそのあおりを受けて値上げが必須になるでしょう。
なるほど、取引の枠組み自体は変わらないけれど、市場全体が減産基調→値上がりになると、産直も価格面では影響を避けにくい、ということですね。 その場合、産直の値上げが必要になったときに、会員(消費者)側からはどんな反応が出そうですか?
減産基調に伴う値上がりの影響は産直取引の方が小幅だと思いますから、一時的には産直利用者が増えると思います。しかし、長期的に見れば、米食離れは避けられないでしょう。
見立てがすごく具体的ですね。短期的には「産直のほうが値上げ幅が小さいので利用が増える」が、長期では米食離れにつながり得る、という流れなのですね。 最後に、この制度を設計する人に、何か一つ伝えるとしたらそれは何ですか?
コメの生産は、国民の食生活のみならず、農村部の自然環境や、我が国の多様な文化にも寄与するものです。ですから、生産者や市場原理に任せるのではなく、国が責任をもって生産を支える仕組みが必要です。
大切なポイントですね。食料としての供給だけでなく、農村環境や文化の維持まで含めて「国が責任を持って支えるべきだ」というご意見だと受け取りました。 ここで伺いたいのですが、この法案の「需要に応じた生産」を法律に位置付ける方向性は、いまのお考えと比べて、国の責任が弱まる印象がありますか?
あります。
ありがとうございます。国の責任が弱まる印象があるのですね。 その「弱まる」と感じるのは、国がどんな役割を担わなくなる(あるいは担いにくくなる)イメージでしょうか?
国がコメの生産量を通じて、食生活、文化、農山村の環境への関与を行いにくくなる印象です。
ありがとうございます。生産量を通じた関与がしにくくなる、という印象なのですね。 ここまでのお話を踏まえると、法案の文言として「需要に応じた生産」を進める場合でも、国が“生産量に関与する余地”を残す設計が重要だ、ということだと理解しました。 この点について、国が生産に関与するやり方としては「どんな手段」なら現実的だと思われますか?
コメの最低流通金額の保証と国内流通量に占める国産米比率の設定が有効ではないでしょうか。
ありがとうございます。「最低流通金額の保証」と「国内流通量に占める国産米比率の設定」という方向性なのですね。 ここで一点だけ伺います。最低流通金額の保証を設けるとした場合、保証の対象はどこ(生産者の出荷段階、卸売段階、小売段階など)に置くのが適切だとお考えですか?
出荷だと思います。
ありがとうございます。出荷段階に置くのが適切、ということですね。 ここまでで一通り重要な示唆を十分いただけたと思いますので、これまでの内容をまとめ、レポートを作成します。
お時間を割いてお話しいただき、ありがとうございました。以下、ここまでの内容に基づくレポート案です。内容に抜け漏れやニュアンス違いがないか、ご確認ください。
