改正案のポイント
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「暫定税率」の廃止と本則税率への復帰
1970年代のオイルショック以降に暫定措置として上乗せされてきた「暫定税率」(25.1円/L)を撤廃し、本来の税率へ戻します。これにより、ガソリン小売価格の引き下げが期待されます。なお、このことに伴い、トリガー条項は削除されます。
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製造・販売業者への差額給付による円滑な価格調整
法施行時点で製造者・販売業者が保有しているガソリンについて、税率変更によって損失を被らないよう、国が差額分を給付します。これにより、価格転嫁の混乱や供給不安を防ぐ措置を講じます。
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地方財政への影響を全額補填
地方揮発油税の暫定税率の廃止により、地方公共団体にとって地方揮発油譲与税の減収が発生します。この減収分の全額を政府が補填する予定です。
法改正が必要な理由
- 国際原油価格の高騰により、ガソリン価格は全国平均で170〜180円/L前後と報告されることが多くなっています。政府は補助金(激変緩和事業)により価格を抑制してきましたが、恒常的な補助金支出には限界があります。
- この法率は税制上の上乗せを廃止し、恒久的な価格引き下げを図ることで、家計支援を実現する狙いがあります。
- 同時に、地域経済・物流・観光など、燃料価格の影響を受けやすい分野の負担軽減も目的としています。
主な論点
Q1:恒久的な廃止 vs 一時的な対応
👍 期待される効果
一時的な発動を繰り返すより、税率を恒久的に引き下げた方が市場の予見性が高まり、政策運用が安定します。
🤔 懸念
恒久的な廃止は財政負担が大きすぎるという指摘があります。
Q2 家計支援・物価抑制 vs 財政負担
👍 期待される効果
ガソリン価格を25円/L前後引き下げることで、生活コストの低減が期待できます。結果としてインフレ抑制や地域消費の下支えにつながります。
🤔 懸念
税収減は約1兆205億円(11月1日に施行される場合、令和7年度は約4,112億円)に上り、財政負担が増大します。法律案には補填財源が明示されておらず、将来的な赤字拡大が懸念されます。
Q3 地方財政の安定 vs 国の補填の持続性
👍 期待される効果
法案は「政府が地方揮発油譲与税の減収分を全額補填するための措置を講ずる」と規定しており、政府に対して補填の実施を義務づけています。地域経済への影響も最小化できます。
🤔 懸念
補填は法的枠組みとして恒久的か不明で、実際の配分時期・算定方法に不透明さが残ります。自治体の安定財源が国の裁量に依存する懸念があります。
Q4 運用コスト・流通現場への影響 vs 制度設計の現実性
👍 期待される効果
差額給付制度により、製造・販売業者の負担を軽減し、価格引き下げを円滑に進められます。行政が市場混乱を抑える仕組みを確保しています。
🤔 懸念
在庫把握や給付金の算定・支払いに事務負担が生じ、制度運用が複雑化する恐れがあります。給付の不正受給防止など、行政コストの増加も懸念されます。
Q5 環境政策・脱炭素との整合性
👍 期待される効果
一時的な経済支援策としては合理的であり、燃料価格を下げて消費活動を刺激することで景気回復に寄与します。
🤔 懸念
ガソリン価格引き下げは燃料消費の増加を招き、CO₂排出削減目標に逆行します。環境政策との整合性が求められます。
Q6 公平性・地域格差
👍 期待される効果
地方部や自動車依存地域の家計を直接的に支援でき、観光業など地域経済の底上げが期待されます。
🤔 懸念
車を持たない都市部住民や公共交通中心地域には恩恵が及ばない恐れがあります。
改正で影響する可能性がある主体
- ガソリン製造・販売業者:税率引下げに伴い国に在庫量を報告し、差額分の補填を受けるための手続きが発生します。
- 地方自治体:地方揮発油譲与税の減収を国が補填します。ただし補填の運用が遅れる場合、短期的な資金繰りに影響の可能性があります。
- 消費者・運輸事業者:燃料価格低下で家計や輸送コストが軽減する可能性があります。
- 国:税収減・補填支出により財源をどのように確保するかが課題となります。
議案提出会派
立憲民主党・無所属, 日本維新の会, 国民民主党・無所属クラブ, 日本共産党, 参政党, 日本保守党
議案提出者一覧
重徳和彦, 階猛, 大西健介, 青柳仁士, 斎藤アレックス, 田中健, 岸田光広, 辰巳孝太郎, 鈴木敦, 島田洋一, 新垣邦男
議案提出の賛成者一覧は衆議院の議案情報のページをご覧ください。
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